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解釈ガイド

右脳型・左脳型は本当にある? 脳研究で見る性格タイプの真実

右脳型・左脳型は本当にある? 言語は主に左脳など左右差は実在するが、1,011人の脳画像研究は脳全体が片側に偏ったタイプを見つけていない。分離脳研究の由来や診断の読み方も。

右脳型・左脳型は本当にある? まず短い答えから

「自分は右脳型だから感覚的で、友だちは左脳型だから論理的」といった話を聞いたことがあるかもしれません。一般に左脳型は論理的で順序立てて考える人、右脳型は創造的で直感的な人として描かれます。2013年の脳画像研究の著者たちも、一般向けの記事では「左脳型」「右脳型」という言葉が性格特性と考え方の両方を指して使われていると整理しています(Nielsen ほか, 2013)。

短く答えると、左右の脳が少しずつ違う仕事を受け持っているのは事実です。多くの人では言語は主に左脳が担い、周りのものに注意を向けたり顔を見分けたりするはたらきは右脳寄りです(Corballis, 2014;Badzakova-Trajkov ほか, 2010)。しかし、7〜29歳の1,011人の脳画像を分析した研究は、こうした左右差は特定のネットワークの局所的な性質であり、脳全体が片側に偏った「左脳型」「右脳型」の人がいるという考えとはデータが合わないと結論づけました(Nielsen ほか, 2013)。

ただし、この研究には参加者の性格を測ったデータがありませんでした(Nielsen ほか, 2013)。そのため、性格との関係そのものを直接確かめた研究ではありません。この記事で取り上げる研究が示しているのは、人を左脳型と右脳型の二つに分ける根拠は見つかっていない、ということに近いものです。mind.io には右脳・左脳の診断はありません。自分の性格特性を得点で確かめたい場合は、ビッグファイブ性格診断やMBTI診断を試せます。

この記事では、左右の脳が実際に何が違うのか、この考えが分離脳研究からどう広まったのか、1,011人の脳を比べた研究が何を確かめたのか、創造性・論理・左利きについてのよくある思い込み、多くの人が信じる理由、そして右脳・左脳診断の読み方を整理します。こうした診断を楽しむ人を責めるための記事ではありません。

左脳と右脳は実際に何が違うのか

左右の脳の違いは実際にあります。いちばん知られた例は言語で、右利きの約95〜99%、左利きの約70%が言語を主に左脳で処理するとされています(Corballis, 2014)。健康な326人が単語を思い浮かべる間の脳の血流を超音波で測った研究では、言語を主に右脳で処理する人の割合は左手を使う度合いとともに増え、強い右利きで4%、両利きで15%、強い左利きで27%でした(要旨による。Knecht ほか, 2000)。

左利きの人を意図的に多く集めたフランスの研究(297人のうち153人が左利き)では、文を作る間にはっきり右脳が優位だった人は左利きの約7%だけでした。研究者たちは、左利きを10%と仮定すると、こうした人は一般の人口の1%未満だろうと推定しています(Mazoyer ほか, 2014)。

逆に右脳寄りのはたらきもあります。ニュージーランドで155人(左利きが48人と一般の人口より多めに含まれる)の脳をfMRIで調べた研究では、表情を見る課題(行ったのは86人)で右脳が優位だったのは右利き53人中50人(94.3%)、左利き33人中24人(72.7%)、線がちょうど真ん中で区切られているかを判断する空間的注意の課題ではそれぞれ79.4%と78.7%でした(Badzakova-Trajkov ほか, 2010)。1,011人の研究でも、右に偏った結合の中心(ハブ)は外の刺激に注意を向けるネットワークに属しており、研究者たちは右脳を損傷したときに空間の片側を無視する症状がずっと多いという研究を挙げています(Nielsen ほか, 2013)。

ただし、これらの違いは「片側の脳が全体として優位になる」一つのスイッチのようにそろって動くわけではありません。同じニュージーランドの研究では、言語が左に強く偏る人ほど顔・空間の課題は右により偏るという、補い合う関係がある程度見られましたが、利き手の得点と空間課題の左右の偏りの相関は事実上ゼロ(r = .001)で、多くの人は言語が左、顔と空間が右という典型的なパターンでしたが、パターンが完全に逆の人や、二種類の課題が同じ側に偏った人もいました(Badzakova-Trajkov ほか, 2010)。安静時の成人300人の脳を分析した研究は、左右差が言語、視覚、内的な思考、注意に関わる互いに独立した四つの因子に分かれると報告しています(要旨による。Liu ほか, 2009;Corballis, 2014)。

そして、左右の脳は別々に働いているわけではありません。左右の脳は数億本の神経線維でつながり、互いに何が起きているかを絶えず伝え合っています(Nobel Assembly, 1981)。分離脳研究でノーベル賞を受けたロジャー・スペリーも、ふだんの状態では二つの半球は片方が働きもう片方が休むのではなく、一つのまとまりとして緊密に協力して働いているように見えると述べています(Sperry, 1981)。教師の脳の知識を尋ねる調査でも、「左右の半球は協力して働く」は正しい文として採点されます(Dekker ほか, 2012;Macdonald ほか, 2017)。

分離脳研究から「右脳型・左脳型」ブームまで

左右の脳への関心は、1860年代に話すことが主に左脳に頼っていると分かったことで高まりました。左脳は右手も動かすため、長く「優位な」半球と呼ばれ、右脳は「劣位の」半球とされてきました(Corballis, 2014)。

1960年代には、いわゆる現代の分離脳研究が始まります。分離脳の患者についての報告は1940年代からあり、スペリーは1950年代初めから動物実験を続けていましたが(de Haan ほか, 2020;Nobel Assembly, 1981)、1960年代にロジャー・スペリー、ジョゼフ・ボーゲン、マイケル・ガザニガが、ほかの治療では抑えられない重いてんかんを和らげる最後の手段として、左右の脳をつなぐ神経線維の束である脳梁を切った患者の研究を始めました(要旨による。Gazzaniga, 2005;Sperry, 1981)。片方の脳だけに情報を見せる実験から、ほとんど話せない右脳も、顔を読み取る、図柄をより大きな枠の中にはめ込む、部分から全体をつかむといったことが得意だと分かりました(Sperry, 1981)。スペリーは1981年に「大脳半球の機能分化に関する発見」でノーベル生理学・医学賞を受けました(Nobel Assembly, 1981)。

分離脳の患者は比較的少数で、手術後も社会生活ではふつうにふるまい、本人も変わったとは感じていないと報告されています。ただし実験の外での行動を詳しく観察した研究は多くなく、この手術は今ではまれです(de Haan ほか, 2020)。スペリーは、回復後のこうした人は、初対面の会話やふつうの健康診断でもたいてい気づかれないほどだと書いています(Sperry, 1981)。

この研究が世の中に伝わる中で、考えは大きく膨らみました。1981年のノーベル賞発表のプレスリリースには、ロシアの生理学者パブロフが人類を「思索家」と「芸術家」に分けたとして、「おそらく思索家では左脳が、芸術家では右脳が優位なのだろう」という一文まで入っていました(Nobel Assembly, 1981)。この一文はスペリー本人ではなく、カロリンスカ研究所ノーベル会議が出したプレスリリースの表現です。当のスペリーは同じ年のノーベル講演で、左右の半球が異なる認知のしかたをするというジェリー・レヴィらの研究を紹介しつつ、一部の結論や、「左脳」対「右脳」をめぐる半ば一般向けの拡大解釈が広がっていることに注意を促し、左右の二分法は「とても簡単に行き過ぎてしまう考え」だと警告しています(Sperry, 1981)。

その後も似た解釈は続きました。神経科学者のマイケル・コーバリスは、分離脳研究のあとに出た左右の脳をめぐる推測の大半は誇張されているか根拠が乏しいと評価し、1979年に初版が出たベティ・エドワーズのデッサンの本『Drawing on the Right Side of the Brain』を、創造性は右脳から生まれるという一般的な見方の代表例に挙げています(Corballis, 2014)。絵を描くことからお金の管理まで、あらゆる話題に「右脳による解決」をうたう一般書があふれたという指摘もあります(要旨による。Lindell, 2011)。日本の研究者たちは、1970〜80年代のいわゆる右脳ブームが再来しているような印象があると記しています(Hatta ほか, 2010)。

1,011人の脳を比べた研究が確かめたこと

右脳型・左脳型が本当にあるなら、ある人は左脳の結合が全体的に強く、別の人は右脳の結合が全体的に強いはずです。米国ユタ大学の研究チームはこの考えを直接確かめるため、中国の北京、フィンランドのオウル、オランダのライデン、米国のニューヨークなど、複数の国の研究機関が公開した安静時の脳画像(fMRI)から、7〜29歳の1,011人のデータを分析しました。灰白質を7,266の領域に分け、画像を左右反転する前と後の結合の強さを比べて、結合ごとにどれだけ片側に偏っているかを測っています(Nielsen ほか, 2013)。

その結果、左に偏った結合が集まる中心(ハブ)が9か所、右に偏ったハブが11か所見つかりました。左のハブにはブローカ野やウェルニッケ野といった言語の領域と、安静時に活発で内面に注意を向けることに関わると考えられているデフォルトモード・ネットワークの領域が含まれ、右のハブは主に外の刺激に注意を向けるネットワークに属していました(Nielsen ほか, 2013)。左や右に偏ったネットワーク自体は実際にあるということです。

肝心なのはその先です。一人の中で左に偏った結合がそろって強くなるかを調べると、一緒に変化した結合はほとんどが同じハブを共有する結合でした(左で144のうち141、右で329のうち314)。左のハブの結合と右のハブの結合の間では、1,620の比較のうち有意な関係は負の方向が20(1.2%)、正の方向が16(1.0%)だけでした。研究者たちは、左右の偏りは脳全体ではなく局所的な性質であり、「個人の脳が全体的な性質として『左脳型』や『右脳型』であるわけではない」と結論づけています(Nielsen ほか, 2013)。

この研究にも限界があります。著者自身が書いているとおり、データには行動や性格を測った情報がなく、利き手の情報も不足していました。また結合の強さだけを測り、その結合がどんな情報を扱っているかは測っておらず、参加者も7〜29歳でした(Nielsen ほか, 2013)。そのため、この研究は性格と脳が無関係だと示した研究というより、「脳全体が片側に偏った人がいる」という右脳型・左脳型の前提を直接確かめ、その前提が成り立たなかった研究として読むのが正確です。一つの研究ですべてが決まるわけではありませんが、多くの人は典型的なパターンでありながら機能ごとの偏りがある程度互いに独立していた、ニュージーランドの研究の結果とも同じ方向です(Badzakova-Trajkov ほか, 2010)。

創造性は右脳、論理は左脳? よくある思い込みを確かめる

「創造性は右脳」は、研究結果が分かれている代表的なテーマです。創造的な思考中の脳の活動を調べた研究を集めた2010年のメタ分析は、右脳が相対的に優位だという結果を出しました(要旨による。Mihov ほか, 2010)。一方、脳画像研究34件を集めた2013年のメタ分析は、さまざまな創造性課題に共通する領域が主に左脳にあると報告しています(要旨による。Gonen-Yaacovi ほか, 2013)。72の実験を検討した2010年のレビューは、創造的な思考は特定の脳領域一つに決定的に頼っているわけではなく、「とくに右脳と結びついているわけでもない」と結論づけました(要旨による。Dietrich & Kanso, 2010)。

別のレビューは、検討した研究からは創造的な課題で右脳の活動が大きいことがうかがえるとしつつ、両半球の離れた多くの領域が連携することも創造性の重要な要素だとして、創造性は片側に偏った機能ではなく分散した機能と考えるほうがよいとまとめています(Lindell, 2011)。最近の研究は、ときに拮抗する大きなネットワーク同士が創造的な思考の間は協力することに注目しています(要旨による。Beaty ほか, 2016)。何より、これらの研究は課題中の脳の活動を見たもので、創造的な人が「右脳型」だと示した研究ではありません。

「論理は左、感情は右」も単純化しすぎです。1,011人の研究の著者たちは、自分たちの結果により合う整理は「論理対創造性」ではなく、左に偏った結合は言語と内的な刺激の知覚、右に偏った結合は外の刺激への注意と結びつけるものだろうと提案しています(Nielsen ほか, 2013)。感情の処理に右寄りの偏りがあるとする研究もあります。コーバリスは、感情についての右脳の優位はこれまで調べられたすべての霊長類に見られるようだと書いており(Corballis, 2014)、ニュージーランドの研究者たちも、空間や感情の処理など一部の非言語的な機能は右脳が優位だと紹介しています(Badzakova-Trajkov ほか, 2010)。ただしスペリーは、分離脳の患者でも片側で生じた感情の反応は分かれていない脳幹を通って素早く両側に広がるようだったとして、ほかの認知機能と違って感情は一つの半球に閉じ込めにくかったと書いています(Sperry, 1981)。感情は右脳だけの仕事だと言い切るのは難しいということです。

「右脳を鍛えると創造性が育つ」という話もよく聞きます。2010年に日本の大学生485人に尋ねたところ75.9%がこれを正しいと答えましたが、研究者たちはこれを科学的に誤った信念の例として調べていました(Hatta ほか, 2010)。短い協調運動で左右の脳機能の統合を高められるという文も、教師への調査で神経神話に分類されており、英国の教師の88%、オランダの教師の82%が正しいと答えていました(Dekker ほか, 2012)。この記事で取り上げた研究の中に、片方の脳だけを鍛えて創造性が高まったことを示した研究はありませんでした。

なぜこれほど多くの人が信じるのか

右脳型・左脳型は、教育の現場でも広く知られた考えです。英国ドーセット地方の教師137人とオランダ・アムステルダム周辺の教師105人が参加した調査では、「半球優位性(左脳・右脳)の違いは学習者の個人差を説明するのに役立つ」という文を、英国の教師の91%、オランダの教師の86%が正しいと答えました。脳と学習に関心があって自ら参加した教師が対象でした(Dekker ほか, 2012)。

米国でオンラインで参加した3,877人を調べた研究では、「人には『左脳型』と『右脳型』がいて、それが学びの違いを説明するのに役立つ」という文を、一般の参加者の64%、教育関係者の49%、神経科学の授業を多く受けた人の32%が正しいと答えました。参加者は全員、大学教育を少なくとも一部受けたボランティアで、著者たち自身もこの人たちを「一般の人々」と呼ぶのは誤解を招くかもしれないと書いています(Macdonald ほか, 2017)。

韓国と日本の調査でも、この思い込みが広く見られました(対象も質問も違うため、数字を直接比べることはできません)。韓国の教員志望の学生521人(初等教育専攻269人、中等教育専攻252人)を調べた研究では、左脳型・右脳型の生徒に関する項目の正答率は10%未満でした(要旨による。Park ほか, 2016)。この研究を引用した別の論文の表によると、「半球優位性の違いは学習者の個人差を説明するのに役立つ」に同意した韓国の教員志望の学生は94%でした(Park ほか, 2016;Chu, 2017による)。2010年に日本の大学生485人に尋ねた調査では、「人間には左脳タイプと右脳タイプがある」を89.5%が正しいと答え、20項目の中で最も高い割合でした(Hatta ほか, 2010)。

なぜこれほど広く信じられているのでしょうか。まず、まったくの作り話ではなく、言語のように一部の機能が片方の半球に偏るという実際の研究結果に一部由来しているからです(Macdonald ほか, 2017)。よく耳にする話ほど正しいと判断されやすい傾向もありました(Hatta ほか, 2010)。脳についての一般的な知識が多い教師ほど、かえって神経神話を多く信じていた調査もあり(Dekker ほか, 2012)、別の研究では、神経科学の授業を多く受けた人のグループほど信じる割合は低かったものの(32%)、なくなってはいませんでした(Macdonald ほか, 2017)。講義で右脳型・左脳型の二分類には科学的な根拠がないと聞いた日本の学生は、そうした講義を受けていない別の大学の学生よりこの文を正しくないと評価しましたが(5段階で3.27対3.82)、同じ学生を講義の前後で比べたものではなく、著者たちもその講義が選択科目で、もともと関心の高い学生が受けた可能性を認めています(Hatta ほか, 2010)。

二つのタイプに分ける説明は覚えやすく、結果の説明が誰にでもある程度当てはまる文でできていると、自分のことのように感じられます。この現象はバーナム効果で詳しく扱っています。教師や大学教育を受けた大人も多く信じている考えなので、信じていたからといって恥ずかしいことではありません。血液型や星座など、ほかの性格の分け方との比較はMBTI・血液型・星座・四柱推命の違いにまとめています。教室で同じように広まった「人にはそれぞれ得意な知能がある」という多重知能の話は、多重知能のガイドで研究から確かめています。

右脳・左脳診断はこう読む

ネットで「右脳・左脳テスト」として広まった絵に、片足で回る女性のシルエット、いわゆるシルエット錯視(スピニング・ダンサー)があります。日本のフラッシュデザイナー、カヤハラ・ノブユキ氏が2003年にネットで公開したこの絵は、時計回りにも反時計回りにも見える錯視です。カナダの研究者たちは、この絵が「右脳派と左脳派を見分けるテスト」として広まったことをきっかけに原因を調べました(Troje & McAdam, 2010)。

研究者たちが引用した2008年のオンライン投票では、約1,600人の回答者のうち3分の2ほどが時計回りに見えたと答えています。研究者たちはこの偏りを脳のタイプではなく、物を下からより上から見下ろした姿として解釈しやすい視覚の傾向で説明しました。さらに元の絵に似たシルエットを、カメラの高さ(上下3度と10度)と回転の速さを変えて12通りに作り直し、24人にそれぞれ一度ずつ、1回4分見てもらうと、見える回転の向きは1分に平均3.68回入れ替わり、上下の角度を均等に混ぜたこの条件全体で時計回りに見えた時間は50.8%でした(Troje & McAdam, 2010)。同じ人でも向きが入れ替わり続けるのですから、最初に見えた向きで脳のタイプを分けることはできません。

手を組んだときにどちらの親指が上に来るか、腕を組んだときにどちらの腕が上になるかで右脳・左脳を見分けるというテストもあります。この記事で取り上げた二つの研究が調べたのは、こうした姿勢と利き手との関係だけで、それさえ結果が分かれています。ある研究は手の組み方、腕の組み方、利き手は互いに独立していると考え(要旨による。Ogah ほか, 2012)、中欧の二つの大規模なサンプル(7,658人と5,062人)を分析した研究は利き手と関連があると報告しました(要旨による。Tran ほか, 2014)。どちらも脳のタイプや性格を測った研究ではありません。

直感と計画のどちらに従うかを尋ねるような右脳・左脳の質問は、自分の考え方や働き方を自分でどう説明するかを記録するもので、どちらの脳が活発かを測るものではありません。脳を四つの領域にたとえた思考の好みの質問紙として知られるハーマン・ブレイン・ドミナンス・インストルメント(HBDI)を作った会社も、このモデルは考え方のたとえであり、HBDIは脳の特定の部位の活動を測るものではなく、このモデルは人を右脳型・左脳型に分けるものでもないと説明しています(Herrmann International のウェブサイト)。こうした結果は、自分を表す自己紹介や会話のきっかけとして楽しめば十分です。

どんな診断でも、こう読んでみてください。一つ目に、結果は自分が答えた好みをまとめたもので、脳の写真ではないことを覚えておきましょう。二つ目に、結果の文が友だちにもそのまま当てはまりそうか考えてみましょう。誰にでも当てはまる文が多ければ、バーナム効果で実際以上に当たっていると感じることがあります。三つ目に、性格特性を得点で見たいなら五つの特性を示すビッグファイブ性格診断を、タイプとしてまとめてみたいならMBTI診断を試せます。MBTIの限界はMBTI診断の正確さにまとめています。これらは研究で効果が確かめられた方法というより、この記事で見た研究から着想を得た提案です。

右脳型・左脳型のよくある質問

Q. 左利きの人は右脳型ですか? A. そうとは言えません。左利きはおよそ10人に1人で、メタ分析は全体の推定値を10.6%(基準によって9.3〜18.1%)としています(要旨による。Papadatou-Pastou ほか, 2020)。それでも左利きの約70%は、右利きと同じく言語を主に左脳で処理しています(Corballis, 2014)。ニュージーランドの若い成人662人を調べた研究では、左利きと右利きはビッグファイブのどの特性にも差がなく、両手を使い分ける人はどちらよりも内向的でした。同じ論文の二つ目の調査では、左利きの人も右利きの人も「左利きのほうが内向的で開放的だ」と信じていました(要旨による。Grimshaw & Wilson, 2013)。

Q. 右脳を鍛えると創造性は高まりますか? A. そうだという根拠は見つかりませんでした。創造的な思考は右脳だけでなく、両半球の多くの領域やネットワークが一緒に働くものとして整理されていて(Lindell, 2011;Beaty ほか, 2016)、「右脳を鍛えると創造性が育つ」は日本の研究で誤った信念の例として調べられています(Hatta ほか, 2010)。

Q. シルエット錯視の女性が時計回りに見えたら右脳型ですか? A. いいえ。回る向きは上から見下ろした姿として解釈しやすい視覚の傾向で偏り、実験室では同じ人でも1分に平均3.68回向きが入れ替わりました(Troje & McAdam, 2010)。

Q. 右脳・左脳診断の結果がとても当たっています。 A. 誰にでもある程度当てはまる文でできた結果は、当たっていると感じやすいものです(バーナム効果)。また、こうした診断は自分が答えた考え方や働き方の好みをまとめたものなので、結果が自分の好みをうまく要約していることはありえます。ただ、それはどちらの脳が優位かを示すものではありません。

Q. では、左脳と右脳は同じ仕事をしているのですか? A. いいえ。多くの人では言語は左脳に、顔の処理と空間的注意は右脳に偏っています(Corballis, 2014;Badzakova-Trajkov ほか, 2010)。根拠がないのは、こうした機能の違いをもとに人そのものを左脳型と右脳型に分けることです(Nielsen ほか, 2013)。

Q. 分離脳の手術を受けた人は二人の人のようにふるまうのですか? A. 実験室で片方の脳だけに情報を見せると左右の半球が別々に反応する様子が見られますが、日常ではおおむねふつうに過ごし、本人も変わったとは感じていないと報告されています。意識そのものが二つに分かれるのかは、研究者の間でもまだ答えが出ていません(de Haan ほか, 2020)。

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