関係ガイド
スタンバーグの愛の三角理論:親密性・情熱・コミットメントと8つの愛のタイプ
スタンバーグの愛の三角理論(親密性・情熱・コミットメント)と8つの愛のタイプ、尺度での測り方と限界、時間による変化、満足度との関連を研究から整理。
愛の三角理論とは:親密性・情熱・コミットメント
愛の三角理論(愛情の三角理論)は、米国の心理学者ロバート・スタンバーグ(Robert J. Sternberg)が1986年の論文で提案した理論です。愛を3つの要素に分けて考えます。親密性は、愛し合う関係で感じる近さやつながり、絆の感覚です。情熱は、ロマンスや身体的な魅力、性的な結びつきへと向かわせる動機です。決定/コミットメントは、短い目で見れば「この人を愛している」という決定、長い目で見ればその愛を保ち続けようとする決意です(Sternberg, 1986)。3つの要素を三角形の3つの頂点に置くことから「愛の三角形」と呼ばれます。この記事では決定/コミットメントを略してコミットメントと書きます。
スタンバーグは三角形の大きさと形を分けて考えました。3つの要素がどれだけ強いかが愛の量、つまり三角形の面積を決め、3つの要素がどんな割合で混ざっているかが愛の種類、つまり三角形の形を決めるというのです。3つが同じくらいなら正三角形に近く、情熱だけ、あるいはコミットメントだけが大きいと片側に傾いた三角形になります。ただしスタンバーグ自身も、三角形は愛の微妙なニュアンスを大まかに表した図にすぎないと付け加えています(Sternberg, 1986)。
3つの要素は性質も違います。スタンバーグは親密性を、母親、父親、きょうだい、親友、恋人への愛に共通して含まれる中心的な要素と考え、情熱とコミットメントは関係によってずっと選択的に現れると考えました。情熱には性的な欲求が大きく働くこともありますが、自尊心、世話をしたい気持ち、所属、自己実現といったほかの欲求が混ざることもあります。また親密性は思いどおりに調整しにくく、情熱はさらに難しい一方、コミットメントは自分でかなり調整できる要素だと考えました。そして関係に浮き沈みがあるときには、コミットメントがほぼ単独で関係を支える時期もあると述べています(Sternberg, 1986)。この記事では理論の内容と、その後の研究が理論をどこまで確かめたかをまとめました。
愛の8つのタイプ:好意から完全な愛まで
3つの要素があるかないかで分けると、組み合わせは全部で8通りになります。スタンバーグはこれを愛の8つのタイプとしてまとめ、それぞれのタイプは要素が完全にあるか完全にないかの極端な場合だとはっきり述べています。実際の関係では3つの要素は「ある・ない」ではなく程度の問題なので、ほとんどの関係はタイプとタイプのあいだのどこかにあるというのです(Sternberg, 1986)。
まず、要素が1つだけか、何もないタイプです。非愛(愛ではない状態)は3つの要素がすべてない状態で、毎日すれ違うほとんどの関係がここに入ります。好意は親密性だけがある関係で、本当の友情で感じる近さとあたたかさです。スタンバーグは「不在テスト」で好意とそれ以上を見分けました。好きな友人が長く離れていると会いたいとは思っても、その不在に心がとどまり続けることはありませんが、それ以上の関係なら相手の不在を何度も思い返すというのです。夢中の愛(心酔愛)は情熱だけがある「ひと目ぼれ」です。ほとんど一瞬で生まれ、同じくらい早く消えることもあり、本人より周りの人のほうが先に気づきやすいとされています。空虚な愛はコミットメントだけがある愛で、長く続いたものの心の通い合いや身体的な魅力を失った関係に見られます。ただし見合い結婚をする社会では、コミットメントから関係が始まることもあるので、空虚な愛は終わりではなく始まりでもありうると述べています(Sternberg, 1986)。
2つの要素が合わさったタイプは3つです。ロマンティックな愛は親密性と情熱が合わさった愛で、好意に身体的な魅力が加わった状態です。『ロミオとジュリエット』のような文学の中の愛がこれに近いとされます。友愛(友愛的な愛)は親密性とコミットメントが合わさった愛で、長く続く献身的な友情といえます。身体的な魅力が落ち着いた結婚生活によく見られるとされています。愚かな愛(見せかけの愛)は、親密性がないまま情熱とコミットメントだけがある愛です。出会って2週間で婚約し、翌月に結婚するような嵐のような恋愛で、情熱はすぐに生まれても親密性はそうはいかないので、関係が終わる危険があると考えられました(Sternberg, 1986)。
3つの要素がすべてそろうのが完全な愛です。とくに恋愛関係で多くの人が目指す愛ですが、スタンバーグはこれをダイエットにたとえ、目標に届くより保つほうが難しいことが多いと述べました。完全な愛にたどり着いたからといって、その愛が続く保証はないというのです(Sternberg, 1986)。ですから8つのタイプは関係の格付け表というより、いまどの要素が大きくどの要素が小さいかを言葉にしてみるための地図に近いものです。理論のなかでも、空虚な愛は関係の始まりになりえ、友愛は身体的な魅力が落ち着いた結婚によくある姿として描かれています。
愛の三角形はどう測るのか、尺度の限界
研究でよく使われるのは、スタンバーグの三角愛情尺度(Triangular Love Scale, TLS)です。親密性、情熱、コミットメントをそれぞれ15項目、計45項目で測り、各文に1(まったくそうではない)から9(非常にそうだ)で答えます(Sorokowski ほか, 2021)。スタンバーグは1997年に2つの研究でこの尺度を検証し、データは尺度の有用性をおおむね、しかし完全にではなく支持すると結論づけました(Sternberg, 1997)。
その後の研究がもっとも多く指摘したのは、3つの要素がきれいに分かれないという点です。交際中の大学生90人の研究では、内的一貫性と2週間の間隔での再検査信頼性は十分で、併存的妥当性についての仮説も支持されましたが、下位尺度どうしの相関が高くなりました(Chojnacki & Walsh, 1990)。別の研究では、項目は想定どおりの因子に載ったものの、モデルの適合はよくなく、3つの因子の相関が高く、多くの項目が2つ以上の因子にまたがって載りました。それでも下位尺度の内的一貫性はとても高く、2か月の間隔での再検査信頼性も十分でした(Whitley, 1993)。未婚の大学生391人の回答で、愛と愛着を測る5つの質問紙を比べた研究でも、これをまとめた2021年の論文によると、3つのまとまりは予想どおりには現れませんでした(Hendrick & Hendrick, 1989; Sorokowski ほか, 2021)。成人204人を調べた研究は、よりしっかりした測定道具と、大学生ではない成人の標本が必要だと指摘し(Acker & Davis, 1992)、日本語版をつくった研究でも複数の項目が2つ以上の因子にまたがったため、それらを除いた27項目で3因子が確かめられました(Kanemasa & Daibo, 2003)。
3つの要素を分けて測ることに成功した研究もあります。新しくつくった項目で若いカップル233人(女性123人、男性110人)を調べた研究と、既婚者213人を調べた研究では、3つの要素がはっきり分かれました(Lemieux & Hale, 1999, 2000)。ただし既婚者の研究は、因子どうしが相関しないと仮定する回転(バリマックス)を使っているので、あとに出てくる因子間の相関とそのまま比べることはできません(Lemieux & Hale, 2000)。もっとも大きな検証は、45か国の11,422人の回答のうち、恋人や配偶者がいて国ごとに150人以上そろった25か国の7,332人を分析した研究です。3因子の構造が確かめられ、尺度が国のあいだでも男女のあいだでも同じように働くという測定不変性も確認されました。韓国もデータを集めましたが、150人に届かず最終分析からは外れています(Sorokowski ほか, 2021)。ただし同じデータを分析し直した研究では、3つの因子のあいだの相関は0.75〜0.81と依然として高いままでした(Kowal ほか, 2024)。2021年の研究チームは、ほとんどの恋愛では3つの要素が一緒に現れやすく、関係の初期には相手を理想化して、肯定的な文にどれも高く答えやすいという説明を示しています(Sorokowski ほか, 2021)。
項目が多いため、研究ごとにばらばらの短縮版が使われてきたことも問題でした。1997〜2021年にこの尺度を使った232の研究を調べると、元の45項目をそのまま使ったのは83件(36%)だけで、145件(64%)は改変した、多くは短くした版を使っていました。そこで要素ごとに5項目、5段階で答える15項目の短縮版(TLS-15)がつくられ、156か国の60,311人が37の言語で答えたデータで信頼性と妥当性が確かめられました。37の言語には韓国語、日本語、フランス語も含まれ、言語のあいだの不変性は、下位尺度ごとに2項目は言語によって違いを認めた部分的測定不変性として確認されています(Kowal ほか, 2024)。12〜88歳の2,791人に短い尺度を使った研究でも、青年と成人の両方で3因子の構造が確かめられました(Sumter ほか, 2013)。
mind.ioには、この尺度で愛の三角形を測る診断はありません。恋愛スタイル診断は、スタンバーグではなくジョン・アラン・リーの6つの恋愛スタイルを見る気軽なセルフチェックです。ネットで「愛の三角形テスト」という名前で出回っている短いクイズも、上で検証された尺度とは項目や採点が違う可能性があるので、まず出どころと項目数を確かめてみてください。
時間がたつと親密性・情熱・コミットメントはどう変わるのか
スタンバーグは、3つの要素は時間とともに違う曲線を描くと考えました。情熱は惹かれる人に出会うと急に高まってすぐに頂点に達し、慣れるにつれて下がって安定した水準にとどまると考えました。親密性は、お互いをよく知るほど予想外のことが減るので表に出る感情は薄れますが、うまくいっている関係なら、それは離れたからではなく深く結びついたからで、そのぶん表に見えない「潜在的な親密性」が積み重なるとされます。しばらく離れて過ごしたり一緒に旅行して日常が変わったりすると、その親密性が表に出るというのです。コミットメントは、関係がうまくいけば最初はゆっくり、次に速く増え、やがて平らになるS字の曲線を描き、関係が衰えれば下がると考えました(Sternberg, 1986)。
研究の結果はおおむねこの図に近いものの、すべてが当てはまったわけではありません。成人204人の研究では、コミットメントは予想どおり既婚者のほうが高かった一方、時間とともに情熱が下がる傾向は女性にだけ見られ、親密性は長い関係でもおおむね下がっていませんでした(Acker & Davis, 1992)。先に見た若いカップル233人と既婚者213人の研究のデータを合わせ、計446人を軽く付き合う段階、ひとりとだけ付き合う段階、婚約、結婚に分けて見直した研究では、交際期間が長いほど親密性と情熱は低く、コミットメントは高くなっていました。段階別では、親密性と情熱は軽く付き合う人でもっとも低く、婚約した人で高く、結婚した人で再び低くなり、コミットメントは段階が進むほど高くなりました(Lemieux & Hale, 2002)。インターネット調査に答えた16,030人の研究でも、交際期間が長いほど情熱は低くコミットメントは高く、年齢が高いほど情熱は低く、親密性とコミットメントは高くなっていました(Ahmetoglu ほか, 2010)。
同じ多国間研究で交際期間ごとに比べると(この分析には150人に届かなかった国の参加者も含まれます)、情熱は交際期間がもっとも短いカップルでもっとも高く、もっとも長いカップルでもっとも低く、コミットメントは1年以下の人がほかのすべての期間より低くなっていました。親密性は1年以下でもっとも低く、3〜6年まで少しずつ高くなり、それより長い関係で再び低くなりました。ただし研究チームは、これらの差は統計的には有意でも、大きさは小さかったと強調しています(Sorokowski ほか, 2021)。年齢で分けた研究では、12〜17歳の青年は18〜30歳より3つの要素すべてが低く、50歳以上は情熱と親密性が低かったものの、コミットメントは若い成人や中年と同じくらいでした(Sumter ほか, 2013)。
この結果を「情熱はいずれ冷める」と読む前に、知っておきたい点があります。上の研究の多くは同じ人を追いかけたものではなく、違う人どうしを一時点で比べたものです。この多国間研究のチームも、親密性やコミットメントが低い短い関係は早く終わって調査に入らなかった可能性や、3つの要素がすべて低い長年のカップルが参加を断った可能性を挙げ、結果を誇張しないよう述べています(Sorokowski ほか, 2021)。カップル75組が14日間つけた日記の研究では、自分か相手の親密性が高まった日には情熱も高かった一方、情熱の変化も親密性を予測していて、どちらが先かは見分けられませんでした(Aykutoğlu & Uysal, 2017)。交際期間が長いカップルほど情熱の平均は低い傾向がありますが、75組の日記研究では日々の情熱が親密性とともに上下していました。
どの要素が関係の満足度と結びつくのか
3つの要素はどれも関係の満足度と一緒に動く傾向があります。若いカップル233人の研究と既婚者213人の研究では、親密性、情熱、コミットメントはいずれも関係の満足度と有意に関連し、回帰分析では3つの要素がそれぞれ満足度を予測しました(Lemieux & Hale, 1999, 2000)。同じ研究で、男女差の向きは違っていました。若いカップルの研究では女性の親密性とコミットメントが高かった一方、既婚者の研究では男性の親密性が高くなっていました(Lemieux & Hale, 1999, 2000)。12〜88歳の研究も、3つの要素の男女差は一般に言われるより小さいとしています(Sumter ほか, 2013)。
どの要素がもっとも大切かについては、答えが分かれます。成人204人の研究では、コミットメントが満足度をもっとも強く一貫して予測し、とくにもっとも長い関係でそうでした(Acker & Davis, 1992)。2か月間関係を追った研究では、3つの下位尺度すべてが、その関係がお互いだけと付き合う関係かどうか、2か月後も続いていたかどうかと関連していましたが、関係が続くだろうという見通しと関連したのはコミットメントと情熱だけでした(Whitley, 1993)。一方、片思いから結婚まで関係の段階別に分けたブラジルの参加者1,102人の研究では、関係が深い段階ほど情熱と親密性が満足度と強く結びつき、コミットメントの比重は小さくなっていました(Cassepp-Borges ほか, 2025)。
性格との関連を見た研究もあります。16,030人の研究では、協調性が高い人は3つの要素がすべて高く、誠実性が高い人は親密性とコミットメントが高くなっていました(Ahmetoglu ほか, 2010)。ただし、これらの結果も多くは一時点で同時に測った相関です。コミットメントが満足を生むとも、満足しているからコミットメントが高まるとも、このデータだけでは言えません。研究ごとに標本や関係の段階、使った尺度が違うため、「もっとも大切な要素」が入れ替わることもあります。これらの研究が正解の要素を教えてくれるわけではないので、自分の関係をふり返るときは、どの要素が相対的に小さく感じられるかを話し合う出発点としてだけ使ってみてください。
理想と現実の三角形、ふたりの三角形
スタンバーグの理論で興味深いのは、ひとつの関係にいくつもの三角形があるという考え方です。いま自分が相手に感じている愛の三角形があり、その関係に望む理想の三角形が別にあります。理想は過去の関係の経験や関係への期待からつくられ、その期待は現実にもとづいていることも、そうでないこともあります。現実の三角形が理想より全体に小さければ過少関与、大きければ過剰関与、大きさより形がずれていれば、たとえば親密性と情熱は望むより少ないのにコミットメントは望むより大きいなら、ずれた関与と呼びました。ふたりの三角形がどれだけ重なるか、自分が感じている自分の三角形と、相手から見た自分の三角形が同じかどうかも、別に見ることができるとしています(Sternberg, 1986)。
この考えの根拠として挙げられたのは、イェール大学の学部生と大学院生のカップル24組(48人)を調べた1985年の研究です。参加者は三角形の尺度ではなく、ルービンの愛情・好意尺度とレヴィンジャーの関与尺度に、4通りのやり方で答えました。自分が相手をどう感じているか、相手が自分をどう感じていると思うか、理想の相手をどう感じたいか、理想の相手に自分をどう感じてほしいかです。関係の満足度をもっともよく予測したのは、「相手が自分をどう感じていると思うか」と「理想の相手に自分をどう感じてほしいか」の差でした。2つが近いほど満足していたということです。また、相手が実際に答えた気持ちとの差より、自分が受け取った相手の気持ちとの差のほうが満足度と強く関連し(相関の中央値 .66 対 .34)、理想の相手は実際の相手より平均してよく評価されていました。これらの結果は、スタンバーグの1986年の論文でのまとめにもとづいています(Sternberg & Barnes, 1985; Sternberg, 1986)。
ただし24組という小さな標本で、三角形の3つの要素を直接測った研究でもありません。今回調べた範囲では、理想と現実の三角形の差を、三角形の尺度と大きな標本で確かめ直した研究は見つかりませんでした。それでも、ここから出てくる実践的なメッセージははっきりしています。スタンバーグは、相手が自分の三角形を違うふうに受け取る大きな理由として、愛を行動で十分に表していないことを挙げました。そこで「行動の三角形」を別に置き、気持ちを打ち明ける、相手の幸せを気づかう、時間や持ち物や自分自身を分かち合う、共感する、心の面でも物の面でも支えることを親密性の表現として、キス、ハグ、見つめ合う、触れる、性的な親密さを情熱の表現として、約束、誠実さ、つらいときも関係にとどまること、婚約と結婚をコミットメントの表現として挙げています(Sternberg, 1986)。
この考えを会話のきっかけに使う方法はシンプルです。親密性、情熱、コミットメントのそれぞれについて「いま」と「自分が望む形」を0〜10の数字で書き、相手も望むなら別に書いてもらって並べてみてください。どの要素で差がいちばん大きいか、その要素がお互いにどんな行動で伝わるとよいかを話せば十分です。これは検証された尺度ではなく、スタンバーグの図を借りた会話の出発点なので、数字で関係を判定したり、相手に点数をつけたりするのには使わないでください。ふたりの図が違うのは失敗の証拠ではなく、話し合うきっかけができたということです。相手が怖かったり、点数をつけるよう迫られたりする関係なら、この方法より安全が先です。危険が差し迫っているときはすぐに110番、相談は内閣府「DV相談ナビ」(#8008)へ。
恋愛スタイル・愛着・愛の言語とはどう違うのか
愛の三角理論は愛を「この関係に何がどれだけあるか」で見て、ジョン・アラン・リーの6つの恋愛スタイルは「愛にどんな態度で向き合うか」で見ます。スタンバーグは1986年の論文で2つの理論を比べ、エロスは夢中の愛にかなり近く、マニアは度を越した夢中の愛で、ストルゲは友愛にとても近いと考えました。一方でルダスは愛の種類ではなく、どんな愛でも使える関わり方であり、プラグマは愛というより相手を探す実用的なやり方で、アガペは利他的な傾向をもつ人の愛にともなう特徴だと考えました。そのうえで、2つの理論を直接突き合わせて検証したことはないため、どちらがより妥当かは開かれた問いだと述べています(Sternberg, 1986)。
実際のデータでは、2つの枠組みはつながっています。交際中の未婚カップルを調べた2つの研究では、エロスとアガペが高いほど親密性、情熱、コミットメントと満足度が高く、ルダスはその逆で、マニアは情熱と正の関連がありました。同じ研究で、安定型の愛着はよい関係の特徴と、回避型と不安・アンビバレント型の愛着は好ましくない関係の特徴と関連していました(Levy & Davis, 1988)。愛への自分の態度は恋愛スタイル診断で、関係のなかで繰り返す不安や距離の取り方は愛着スタイル診断と愛着スタイル別の恋愛傾向で、別に見ることができます。
愛の言語は、どんな行動で愛をやりとりするときに強く感じるかを問う点で、スタンバーグの行動の三角形と重なります。ただし愛の言語は5つの表現のしかたを、行動の三角形は3つの要素がそれぞれどんな行動に表れるかを分けたもので、同じ枠組みではありません。これらの理論はお互いの代わりにはなりません。三角形は関係にいま何があるか、恋愛スタイルは愛への態度、愛着は近さをめぐる不安と回避、愛の言語は表現のしかたを見るレンズなので、あわせて使えば、ひとつだけでは見落とす部分を補えます。
愛の三角理論についてよくある質問
Q. 愛の三角理論でいちばんよい愛は完全な愛? A. スタンバーグは完全な愛を多くの人が目指す愛と考えましたが、たどり着くより保つほうが難しいことが多く、たどり着いても続く保証はないと述べています(Sternberg, 1986)。8つのタイプは極端な場合を分けたもので、実際の関係のほとんどはそのあいだにあります。いまどのタイプかより、3つの要素のバランスがどう変わっているかを見るほうが理論に合っています。
Q. 付き合い始めの情熱はいずれ冷める? A. 多くの国のカップルを比べた研究では、交際期間が長いカップルほど情熱が低かったものの、その差は小さく、違うカップルを一時点で比べた結果です(Sorokowski ほか, 2021)。成人204人の研究では情熱の低下は女性にだけ見られ(Acker & Davis, 1992)、75組の日記研究では親密性が高まった日に情熱も高くなっていました(Aykutoğlu & Uysal, 2017)。平均の流れが、ひとつのカップルの先行きを決めるわけではありません。
Q. コミットメントだけが残った関係は終わらせるべき? A. 理論だけでそう判断することはできません。スタンバーグは、コミットメントだけの空虚な愛は長い関係の終わりに現れることもあれば、見合い結婚のように関係の始まりになることもあると考え、浮き沈みのあるときにはコミットメントがほぼ単独で関係を支えることもあると述べています(Sternberg, 1986)。ただし、コミットメントは何でも我慢するという意味ではありません。相手が怖かったり、誰と会いどこへ行くかまで管理されていたりするなら、それは愛のバランスではなく安全の問題です。危険が差し迫っているときはすぐに110番、相談は内閣府「DV相談ナビ」(#8008)へ。トラウマボンドのガイドに相談先をまとめています。
Q. 愛の三角形テストは正確? A. 研究用の45項目の三角愛情尺度は、25か国で3因子の構造と測定不変性が確かめられましたが、3つの要素どうしの相関が高く、きれいに分かれないという指摘が続いています(Sorokowski ほか, 2021; Kowal ほか, 2024)。ネットの短いテストはこの尺度と項目や採点が違うことがあるので、結果を関係の判定として受け取らないでください。mind.ioには、この尺度で測る診断はありません。
Q. 愛の三角形と6つの恋愛スタイルは同じもの? A. いいえ。三角理論は関係のなかに親密性、情熱、コミットメントがどれだけあるかを、リーの理論は愛への態度を見ます。スタンバーグは、ストルゲは友愛に近い一方、ルダスとプラグマは愛の種類ではないと考えました(Sternberg, 1986)。リーの理論は6つの恋愛スタイルで別にまとめています。
Q. 恋人と三角形の形が違うと合わない? A. 形が違うだけで合わないと判断できるほどの根拠はありません。スタンバーグはふたりの三角形が大きく重なるほど満足度と関連すると考えましたが、その根拠とした1985年の研究は24組を調べたもので、実際の気持ちよりお互いが受け取った気持ちのほうが満足度と強く関連していました(Sternberg & Barnes, 1985; Sternberg, 1986)。形が違うなら、お互いがどの要素をもっと望んでいるか、その要素がどんな行動で伝わるとよいかを話してみてください。
参考文献:Sternberg, R. J., & Barnes, M. L. (1985), Real and ideal others in romantic relationships: is four a crowd?, Journal of Personality and Social Psychology 49(6), 1586-1608, https://doi.org/10.1037/0022-3514.49.6.1586; Sternberg, R. J. (1986), A triangular theory of love, Psychological Review 93(2), 119-135, https://doi.org/10.1037/0033-295X.93.2.119; Levy, M. B., & Davis, K. E. (1988), Lovestyles and attachment styles compared: their relations to each other and to various relationship characteristics, Journal of Social and Personal Relationships 5(4), 439-471, https://doi.org/10.1177/0265407588054004; Hendrick, C., & Hendrick, S. S. (1989), Research on love: does it measure up?, Journal of Personality and Social Psychology 56(5), 784-794, https://doi.org/10.1037/0022-3514.56.5.784; Chojnacki, J. T., & Walsh, W. B. (1990), Reliability and concurrent validity of the Sternberg Triangular Love Scale, Psychological Reports 67(1), 219-224, https://doi.org/10.2466/pr0.1990.67.1.219; Acker, M., & Davis, M. H. (1992), Intimacy, passion and commitment in adult romantic relationships: a test of the triangular theory of love, Journal of Social and Personal Relationships 9(1), 21-50, https://doi.org/10.1177/0265407592091002; Whitley, B. E. (1993), Reliability and aspects of the construct validity of Sternberg’s Triangular Love Scale, Journal of Social and Personal Relationships 10(3), 475-480, https://doi.org/10.1177/0265407593103013; Sternberg, R. J. (1997), Construct validation of a triangular love scale, European Journal of Social Psychology 27(3), 313-335, https://doi.org/10.1002/(SICI)1099-0992(199705)27:3<313::AID-EJSP824>3.0.CO;2-4; Lemieux, R., & Hale, J. L. (1999), Intimacy, passion, and commitment in young romantic relationships: successfully measuring the triangular theory of love, Psychological Reports 85(2), 497-503, https://doi.org/10.2466/pr0.1999.85.2.497; Lemieux, R., & Hale, J. L. (2000), Intimacy, passion, and commitment among married individuals: further testing of the triangular theory of love, Psychological Reports 87(3), 941-948, https://doi.org/10.2466/pr0.2000.87.3.941; Lemieux, R., & Hale, J. L. (2002), Cross-sectional analysis of intimacy, passion, and commitment: testing the assumptions of the triangular theory of love, Psychological Reports 90(3), 1009-1014, https://doi.org/10.2466/pr0.2002.90.3.1009; Kanemasa, Y., & Daibo, I. (2003), Three components in the triangular theory of love and intimate opposite-sex relationships [in Japanese], Japanese Journal of Research on Emotions 10(1), 11-24, https://doi.org/10.4092/jsre.10.11; Ahmetoglu, G., Swami, V., & Chamorro-Premuzic, T. (2010), The relationship between dimensions of love, personality, and relationship length, Archives of Sexual Behavior 39(5), 1181-1190, https://doi.org/10.1007/s10508-009-9515-5; Sumter, S. R., Valkenburg, P. M., & Peter, J. (2013), Perceptions of love across the lifespan: differences in passion, intimacy, and commitment, International Journal of Behavioral Development 37(5), 417-427, https://doi.org/10.1177/0165025413492486; Aykutoğlu, B., & Uysal, A. (2017), The relationship between intimacy change and passion: a dyadic diary study, Frontiers in Psychology 8, 2257, https://doi.org/10.3389/fpsyg.2017.02257; Sorokowski, P., Sorokowska, A., Karwowski, M., Groyecka, A., Aavik, T., Akello, G., et al. (2021), Universality of the triangular theory of love: adaptation and psychometric properties of the Triangular Love Scale in 25 countries, The Journal of Sex Research 58(1), 106-115, https://doi.org/10.1080/00224499.2020.1787318; Kowal, M., Sorokowski, P., Dinić, B. M., Pisanski, K., Gjoneska, B., Frederick, D. A., et al. (2024), Validation of the short version (TLS-15) of the Triangular Love Scale (TLS-45) across 37 languages, Archives of Sexual Behavior 53(2), 839-857, https://doi.org/10.1007/s10508-023-02702-7; Cassepp-Borges, V., Gonzales, J. E., Frazier, A., & Ferrer, E. (2025), Love and relationship satisfaction as a function of romantic relationship stages, Trends in Psychology 33(3), 1027-1042 (online 2023), https://doi.org/10.1007/s43076-023-00333-4
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