解釈ガイド
自己効力感とは? 意味と自己肯定感との違い、高められるかを研究から解説
自己効力感とは何か、自己肯定感との違い、尺度での測り方、成果との関係、高める方法について研究を整理。
自己効力感とは:結論から
自己効力感(self-efficacy)は、「この課題を自分はやりとげられる」という信念を指す心理学の用語で、セルフ・エフィカシーとも呼ばれます。スタンフォード大学のアルバート・バンデューラ(Albert Bandura)が1977年の論文で提案した概念で、バンデューラは、ある結果を得るのに必要な行動を自分がうまく実行できるという確信を「効力予期」と呼びました。そして、こうした予期が、困難に立ち向かう行動を始めるかどうか、どれだけ努力するか、障害や嫌な経験を前にどれだけ長く続けるかを左右するという仮説を立てました。ただし、必要な能力が欠けていれば、予期だけでは望む成果は生まれないことも明記しています(Bandura, 1977)。
バンデューラは2006年に書いた尺度づくりの手引きで、自己効力感を「ある成果を生み出す自分の能力についての信念」とまとめています。この信念は一つに決まった性格特性ではなく、生活の領域ごとに分かれた信念のまとまりで、たとえば会社を経営する人が、組織を率いることには高い効力感をもっていても、子育てには低い効力感しかもたないことがあると説明しています(Bandura, 2006)。そのため「自己効力感が高い人」より「この課題についての自己効力感が高い人」と言うほうが、バンデューラの定義に近くなります。
結論からいうと、自己効力感は仕事や勉強がよくできる人で高い傾向がありますが、同じ人を時間を追って見ると、のちの成果を押し上げる力というより、それまでにやりとげた経験の結果に近いものでした。ただし、実験で自己効力感を高めると健康行動がある程度変わったという結果もあります。自己効力感を高めようとするプログラムの効果はおおむね小さく、高ければ高いほどよいわけでもありませんでした。以下で、それぞれの根拠を研究と数字で整理します。
この記事では、自己効力感の意味と、自己肯定感や自信との違い、四つの源、尺度での測り方、成果との関係とどちらが先かという論争、自己効力感を高めようとした介入研究、よくある誤解を扱います。mind.ioには自己効力感の検査はなく、この記事にも尺度の項目や得点の解釈は載せていません。一般自己効力感尺度(GSE)などの検査は「どう測るのか」の節で研究として紹介するだけです。
自己肯定感・自信・成長マインドセットとどう違うのか
バンデューラは、自己効力感を自己肯定感(自尊感情)、統制の所在、結果予期と区別すべきだと強調しました。自己効力感は「この課題をやれるか」という能力の判断で、自己肯定感は「自分は価値ある人間か」という自分の価値の判断なので、バンデューラの言葉では両者はまったく別の現象です(Bandura, 2006)。この区別に従えば、ある課題は苦手だと感じながら自分を大切に思うことも、課題をうまくこなしながら自分を低く見ることもありえます。自己肯定感の高め方は自己肯定感を高める方法で別にまとめています。
ただ、実際のアンケートでは両者はかなり重なります。一般自己効力感尺度(GSE)の開発者が公開した資料では、旧東ドイツからの移住者(1回目の調査は男性528人、女性380人)の一般自己効力感と自己肯定感の相関は、1989年に男性.51、女性.59、1991年には.34と.40でした(2回目の調査は男性122人、女性102人; Schwarzer, 2014)。ある研究チームはメタ分析で、自己肯定感、統制の所在、神経症傾向、一般自己効力感を測る尺度どうしが強く関連していたことから、これらは同じ上位概念を示す指標かもしれないと提案しました(Judge ほか, 2002)。一方、別のチームは、一般自己効力感は動機づけにかかわる変数と、自己肯定感は感情にかかわる変数とより強く関連し、両者は区別できると結論づけました(Chen ほか, 2004)。この2本の論文は抄録で確認しました。
自己効力感は結果予期とも違います。バンデューラは1977年の論文で、ある行動がある結果につながるだろうという見積もり(結果予期)と、その行動を自分がうまく実行できるという確信(効力予期)を分けました(Bandura, 1977)。「しっかり勉強すれば合格する」と思うことと、「自分はそれだけ勉強できる」と思うことは別の判断だということです。統制の所在(locus of control)は、結果が自分の行動しだいか、自分では動かせない外の力しだいかについての信念なので、これとも違います。バンデューラは、よい成績は完全に自分の出来しだいだと信じながら、そんな成績を出す力が自分にはないと感じて落ち込む学生を例に挙げています(Bandura, 2006)。
自信とはどう違うのでしょうか。この記事のために読んだ研究のなかに、両者をはっきり区別したものはありませんでした。日常でいう自信は広い言葉で、バンデューラが示した自己効力感の尺度は、具体的な活動ごとに「いまそれをやれるとどのくらい確信しているか」を尋ねます。項目は「するつもりだ」ではなく「できる」の形で書くよう勧めていて、「できる」は能力の判断、「するつもりだ」は意図だからです(Bandura, 2006)。成長マインドセットは、人の能力は固定されておらず変えられるという信念なので(Burnette ほか, 2013)、ある課題をいまやれるかという自己効力感とは尋ねていることが違います。この論文は抄録で確認しました。マインドセットの研究は成長マインドセットのガイドにまとめています。
自己効力感はどこから生まれるのか:四つの源
バンデューラは、自己効力感は四つの主な情報源から生まれると考えました。自分でやりとげた経験(遂行行動の達成、熟達の経験)、他人がやりとげるのを見る代理経験、「あなたならできる」のような言葉による説得、そして緊張や動悸のような生理的な状態です。情報が当てになるものであるほど、自己効力感も大きく変わるとしています。この理論は性格検査ではなく、行動が変わる仕組みを説明しようとするもので、1977年の論文は、ヘビ恐怖症で生活に支障が出ていた成人が、手本を見たあと手助けを受けながら自分でやってみる治療(参加モデリング)、手本を見るだけの治療、治療なしのいずれかを受けた研究を根拠に挙げています(Bandura, 1977)。
四つの源の力は同じではありません。バンデューラは、自分でやりとげた経験は自分自身の熟達にもとづくため、とくに影響力が大きいとしました。成功は予期を高め、失敗がくり返されると予期は下がり、失敗が早い段階で起きるとなおさらだと考えました。代理経験は他人との比較からの推測に頼るので、自分の達成という直接の証拠より当てにならず、言葉による説得で生まれた予期は、実際の経験という土台がないため弱く、反する経験をすると簡単に消えうるとしています。体の覚醒状態は、人が自分の不安やストレスへの弱さを判断するときに一部頼りにする情報です(Bandura, 1977)。
自分でやりとげた経験が最も強い源だという点は、その後の研究もおおむね支持していますが、例外もあります。学校の研究をレビューした論文は、熟達の経験がふつう最も影響力のある源だが、源の強さは性別、民族、学力、教科といった文脈によって違うとまとめました(Usher & Pajares, 2008)。学業的自己効力感の研究61本(8,965人)をまとめたメタ分析では、ほかの源を統制すると、自分でやりとげた経験が自己効力感と群を抜いて強く関連し、四つの源をあわせた説明力は、理系(STEM)以外の教科(14本、R² = .37)のほうが理系の教科より大きくなりました(47本、R² = .22; Byars-Winston ほか, 2017)。この2本は抄録で確認しました。相関をまとめた分析なので、源が自己効力感をつくると言い切ることはできません。
どう測るのか:一般的な尺度、課題別の尺度、無料テスト
最もよく知られた一般的な尺度は、ドイツでラルフ・シュワルツァーとマティアス・エルサレムがつくった一般自己効力感尺度(GSE)です。日々のわずらわしい出来事への対処や、さまざまなストレスの多い出来事のあとの適応を予測するためにつくられた尺度で、10項目に4段階で答えます(Schwarzer & Jerusalem, 1995)。1979年に20項目で始まり、1981年に10項目に減らされ、その後さまざまな言語に訳されました。シュワルツァーを含む研究チームは、自己効力感は状況に応じて概念化すべきだというバンデューラの考えに同意したうえで、GSEはさまざまなストレス状況に広く対処できるという、幅広く安定した有能感をねらったものだと説明しています。25か国の19,120人のデータでは信頼性(α)は.86で、複数の因子に分かれるという仮説は退けられ、一つの因子にまとまりました。ただし各国で無作為に標本を選んではいないため、国による違いは標本の違いかもしれないと研究チームが述べており、この記事では国ごとの比較はしません(Scholz ほか, 2002)。
GSEは韓国語(Lee ほか, 1994)、日本語(Ito ほか, 2005)、フランス語(Dumont ほか, 2000)にも訳されています。25か国の研究の韓国の標本は147人で信頼性は.88(Scholz ほか, 2002)、2004年にソウルで集めた941人のデータでは.86でした(Luszczynska ほか, 2005)。韓国語版の構造を単独で検証した研究として見つかったのは、南カリフォルニアで韓国系の人々が通う教会2か所とソーシャルメディアで募集した、糖尿病のある韓国系の高齢移民171人を調べた2023年の研究だけでした。信頼性は0.81で、2因子モデルのほうがデータによく合いましたが、その一つの下位尺度「自信」の信頼性が0.54と低かったため、1因子として使うことが勧められています。研究チームは、この結果はほかの集団に一般化できず、新型コロナウイルスの流行が参加者の自己効力感のとらえ方に影響したかもしれないと述べています(Kim ほか, 2023)。日本ではこれとは別に、16項目の「一般性セルフ・エフィカシー尺度(GSES)」がつくられています(坂野・東條, 1986)。
バンデューラは、どんな場面にも使える万能の自己効力感尺度はないと述べています。「一つの尺度ですべてを測る」やり方は、万能の検査の項目の多くがその領域とほとんど関係ないかもしれないため、説明力も予測力もたいてい低いというのです。バンデューラが勧める尺度は、その領域に合わせた具体的な活動ごとに、0(「できない」)から100(「確実にできる」)まで10きざみで確信の度合いを記入させるもので、段階の少ない尺度は感度も信頼性も低いので避けるよう述べています。評価されることへの不安を減らすため、名前を書かずに一人で答えてもらい、尺度の題名も「自己効力感」ではなく「評価質問票(Appraisal Inventory)」のような目立たない名前にするよう勧めています(Bandura, 2006)。
実際、課題に合わせた尺度のほうがよく予測したという研究が少なくありません。学業場面の自己効力感の研究をレビューした論文は、比べる課題に合わせた具体的な尺度のほうが、全般的な尺度より関連する結果をよく説明し予測するとまとめました(Pajares, 1996)。韓国で自信、自己調整効力感、課題の難しさの好みの三つの因子、28項目(8・10・10項目)でつくられた学業的自己効力感尺度も、一般自己効力感尺度より学業成績をよく予測しました(Kim & Park, 2001)。GSEの開発者も、特定の行動を予測するならその行動に合わせた尺度のほうがよいと案内しています(Schwarzer, 2014)。一般的な尺度には、内容的妥当性が低く、複数の次元が混ざっているかもしれないという批判がある一方(Chen ほか, 2001)、三つの一般的な尺度のいずれも項目の測定特性は許容できる水準で、とくに自己効力感が低いほうでそうだったという分析もあります(Scherbaum ほか, 2006)。この段落のうち、開発者のFAQ以外の4本の論文は抄録で確認しました。
インターネットの無料の「自己効力感テスト」はどうでしょうか。特定の無料オンライン自己効力感テストを検証した研究は見つかりませんでした。近いものとしては、GSEの開発者がウェブ上でコンピューター利用者1,437人から回答を集め、測定特性はすべて満足できるものだったと報告した1999年の研究があります(Schwarzer ほか, 1999)。この論文は抄録で確認しました。開発者自身が運営したウェブ調査であり、無料テストのサイトを検証した研究ではありません。開発者は、GSEには「何点以上なら高い」という基準点がなく、人をそのように分けることには賛成しないと述べ、自分たちのFAQがこの尺度の唯一の手引きだとしています(Schwarzer, 2014)。テストの点数は「いまの自分はこう感じている」という目安程度にとどめ、特定の課題についての信念は、その課題に合わせた質問で別に確かめるほうが、バンデューラの案内に近いでしょう。
成果とどれくらい関連し、どちらが先なのか
自己効力感はさまざまな領域の成果と関連していました。仕事にかかわる成果を扱った114本の研究(効果量157、21,616人)をまとめたメタ分析では、自己効力感と成果の加重平均相関は.38でした(Stajkovic & Luthans, 1998)。ただし、性格(ビッグファイブ)、知能、仕事や課題の経験もあわせて考えると、自己効力感が上乗せして説明する分は比較的小さくなりました。複雑さの低い仕事や課題では成果を予測しましたが、中程度や高い複雑さでは予測せず、課題の遂行は予測しても職務の遂行は予測しませんでした(Judge ほか, 2007)。この2本は抄録で確認しました。抄録には、.38が補正された値かどうかは書かれていません。
学業でも似た結果です。1991年のメタ分析は、さまざまな教科、研究デザイン、測定方法を通じて、自己効力感が学業成績や粘り強さと有意な正の関連を示した一方、関連の大きさは研究によって違ったと報告しました(Multon ほか, 1991)。大学の成績(GPA)にかかわる要因を扱ったメタ分析は、7,167本の論文から得た241のデータで50の要因を比べ、学業的自己効力感は成績と中程度に、遂行の自己効力感(performance self-efficacy)は大きく相関し、50の中で最も強かったとしました(Richardson ほか, 2012)。健康行動では、ソウルの標本でGSEの得点が高い人は低い人より運動や健康的な食事を規則的にしていました(Luszczynska ほか, 2005)。いずれも同時に見られた関連なので、自己効力感が高かったから成果がよくなったという意味ではありません。MultonとRichardsonの論文は抄録で確認しました。
原因かどうかを確かめるには実験が必要です。態度・規範・自己効力感のいずれかを対照条件より高める処置に参加者を無作為に割り当てた204の実験的検証をまとめたメタ分析では、自己効力感を変えた場合、健康行動の意図が中程度に変わり(d+ = .51)、実際の行動も小〜中程度に変わりました(d+ = .47; Sheeran ほか, 2016)。抄録には、このうち自己効力感の実験がいくつなのかは書かれていません。この記事で扱う研究のなかで、自己効力感が行動を変えることを示す最も直接的な実験的根拠です。この論文は抄録で確認しました。抄録には、行動をどれくらいの期間追ったかは書かれていません。
では、どちらが先なのでしょうか。バンデューラも1977年の論文で、効力予期と遂行が互いに与える影響を明らかにするには、変化の過程の重要な時点ごとに両方を測るべきだと述べています(Bandura, 1977)。同じ人を何度も測った研究をまとめたメタ分析では、自己効力感とその次の成果の補正済みの個人内相関は.23でしたが、一人ひとりの時間的な傾向を統制すると.06に弱まり、有意ではなくなりました。逆に、前の成果とその次の自己効力感の補正済み相関は.40で、傾向を統制しても.30が残りました。研究者たちは、自己効力感は将来の成果を押し上げる力というより、主に過去の成果の産物だと結論づけています(Sitzmann & Yeo, 2013)。二つの時点で両方を測った学業研究11本(2,688人)をまとめた分析では、両方向の影響が見られましたが、成績が次の自己効力感に与える影響(β = 0.205)がその逆(β = 0.071)より大きく、子どもでは成績から信念への方向だけが見られました。自己効力感の理論家が勧める方法に沿った研究ほど、両方向の影響が強く出ていました(Talsma ほか, 2018)。この2本は抄録で確認しました。抄録には、相関を何について補正したかは書かれていません。
自己効力感がむしろ成果と逆に動いた研究もあります。大学生56人を個人内で何度も測った研究は、ふつう見られる正の相関は過去の成果が自己効力感を高めた結果であり、自己効力感が次の遂行を下げうるという予測を支持しましたが、185人を対象にした2つ目の研究では、目標が難しいときに自己効力感が遂行を正に予測しました(Vancouver ほか, 2001)。分析的なゲームで87人のうち43人の自己効力感を実験的に高めると、次の試行の遂行が下がり(Vancouver ほか, 2002)、授業の5回の試験の前に質問票に答えた学生63人の研究では、個人内では自己効力感が高いときほど動機づけと試験の成績が低かった一方、人と人の間では正の関連が見られました(Vancouver & Kendall, 2006)。何をすればよい成果になるのかがあいまいなときは負、はっきりしているときは正の関連だったという研究もあります(Schmidt & DeShon, 2010)。バンクーバーの研究グループはいまでは、自己効力感が努力と遂行にプラスにもマイナスにも働くとするモデルを示しています(Vancouver & Purl, 2017)。これに対しバンデューラとロックは、9つのメタ分析と目標設定の研究がこうした結果と矛盾すると反論し(Bandura & Locke, 2003)、バンデューラは、これらの研究が理論、方法、分析、測定の重要な要件を満たしていないと批判しました(Bandura, 2012)。大半は大学生を対象にした小規模な研究なので、「自己効力感が高いと成果が下がる」という法則として読むべきではなく、論争はいまも続いています。この段落の論文はすべて抄録で確認しました。
目標をかなえるために根拠のある方法(実行意図、WOOP)は引き寄せの法則のガイドに、先延ばしと「うまくやれる」という自信の関係は先延ばしのガイドにまとめています。
自己効力感は高められるのか:介入研究が示したこと
自己効力感を高めようとするプログラムの効果は、おおむね小さいものでした。健康な成人の身体活動プログラムの研究27本(5,501人)をまとめたメタ分析では、自己効力感の変化の平均効果量はd = 0.16でした(Ashford ほか, 2010)。健康な成人の身体活動を増やすランダム化比較試験に絞った分析では、見つかった1,080本のうち20本が含まれ、運動課題についての自己効力感はg = 0.208、障害を乗り越えることについての自己効力感はg = 0.128、身体活動はg = 0.335だけ増えました(Higgins ほか, 2014)。自動化されたデジタルの健康プログラムの研究20本(5,624人)では、g = 0.190でした(Newby ほか, 2021)。この3本は抄録で確認しました。
肥満のある成人を扱ったメタ分析でも、自己効力感への効果は小さく(d = 0.23)、身体活動への効果は中程度でした(d = 0.50)。61の比較のうち対照群があるのは25、対照群なしで前後を比べただけのものが36で、自己効力感の変化と身体活動の変化は有意には関連していませんでした(Olander ほか, 2013)。生徒・学生の読みの自己効力感を扱った30の研究(処置2,300人、対照・比較1,957人)では、対照群と比べた効果がg = 0.24、別の処置と比べた効果がg = 0.44、前後の比較がg = 0.36で、学術誌に掲載された研究かどうかが効果量に影響していました(Unrau ほか, 2018)。慢性疾患のある人向けの6週間の自己管理プログラム(CDSMP)のメタ分析では、全般的な自己効力感への効果が4〜6か月後の0.35(5本)から9〜12か月後の0.20(3本)に下がった一方、病気の管理についての自己効力感とほかの症状の管理についての自己効力感への効果は、9〜12か月後にかえって大きくなりました。この効果量は、ランダム化比較試験と前後比較の評価をあわせて計算した値です(Brady ほか, 2013)。Unrauの論文は抄録で確認しました。
どんな要素を含むプログラムで自己効力感がより上がったのでしょうか。身体活動の研究では、自分の過去の遂行や他人の遂行についてのフィードバックを含むプログラムで自己効力感が最も高く、代理経験もより高い自己効力感と関連していました。一方、説得、段階的な熟達、障害の洗い出しは、より低い自己効力感と関連していました(Ashford ほか, 2010)。同じグループが、同じく健康な成人の研究27本で行った分析では、行動計画づくり、やり方の指導、行動しようとする努力の強化が自己効力感と身体活動の両方が高いことと、再発予防と段階的な課題設定は両方が低いことと関連していました(Williams & French, 2011)。二つの分析はおそらく同じ研究を扱っているので、別々に確かめられた二つの結果と数えないほうがよく、熟達を一歩ずつ積むはずの段階的な課題が、なぜ低い自己効力感と関連したのかは抄録には書かれていません。健康的な食事のランダム化比較試験では、ストレス管理がすべての分析で一貫して自己効力感の効果と関連し、ほかの技法の根拠はより弱いものでした(Prestwich ほか, 2014)。デジタルのプログラムでは、どの技法が最もよく効くかははっきりしませんでした(Newby ほか, 2021)。
肥満のある成人のメタ分析の研究チームは、自分たちの結果は複数の技法が混ざったプログラムを比べたものなので、ある技法を単独で使ったときに同じ効果があるという意味に受け取らないよう注意しています(Olander ほか, 2013)。前の段落の結果も複数の技法が混ざったプログラムから得られたもので、同じ限界があります。対照群なしで前後を比べただけの研究も含まれ、学術誌に掲載されたかどうかのような要因が効果量を変えることもありました。前の段落のAshford、WilliamsとFrench、Prestwich、Newbyの論文は抄録で確認しました。
日常に置きかえると、これらの研究で効果が大きかったのは、具体的な行動計画を立てること、自分の過去の遂行や他人の遂行についてのフィードバックを得ること、他人がやりとげる様子を見ること(代理経験)、やり方を学ぶこと、努力を認めてもらうこと、そして食事の研究で一貫して見られたストレス管理です。これは決まった「自己効力感の高め方」ではなく、複数の技法が混ざったプログラムで見られた傾向です。「あなたならできる」のような言葉で励ます説得は、こうしたプログラムのなかでむしろより低い自己効力感と関連し、ポジティブなアファメーションが自己効力感を高めるかを直接測った研究は見つかりませんでした。アファメーションの研究は引き寄せの法則のガイドにまとめています。
よくある5つの誤解
誤解1 自己効力感は自己肯定感と同じ意味だ。バンデューラは、能力の判断と自分の価値の判断はまったく別の現象だとしています(Bandura, 2006)。実際の得点はかなり重なり、同じ上位概念の一部と見る研究チームもありますが(Judge ほか, 2002)、動機づけや感情との関連が違い、区別できるとする研究もあります(Chen ほか, 2004)。両者は関連していますが、同じものではありません。
誤解2 自己効力感は高ければ高いほどよい。大学生207人が、ある科目の二つのレポート、二つの試験、科目全体について計5回自己効力感に答えた研究では、信念と実際の成績がずれることがよくありました。成績の低い学生は実際より高く、成績の高い学生は実際より低く見積もり、実際より低く見積もった学生は、正確に見積もった学生や高く見積もった学生より、似た次の課題でよい成績をとりました。研究チームは、自己効力感は自己成就的予言ではなく、高すぎると学業の自己調整や成績に悪影響があるかもしれないとしましたが、信念が実力と合っているのが最もよいのかどうかは研究者の間でも意見が分かれていると書いています(Talsma ほか, 2019)。分析的なゲームの実験では、自己効力感を高めると過信によって論理的な誤りが増えました(Vancouver ほか, 2002)。バンデューラも、求められることがはっきりしない課題で状況の要求を低く見積もる人は、自己効力感が実際の達成より高く出ると述べています(Bandura, 1977)。だからといって、低いほどよいという意味ではありません。最初の2本の論文は抄録で確認しました。
誤解3 ポジティブな言葉(アファメーション)をくり返せば自己効力感が高まる。アファメーションが自己効力感を高めるかを直接測った研究は見つかりませんでした。バンデューラは、言葉による説得で生まれた予期は自分の達成から生まれた予期より弱く、反する経験をすると簡単に消えうると考えました(Bandura, 1977)。身体活動プログラムをまとめたメタ分析でも、説得はより低い自己効力感と関連していました(Ashford ほか, 2010)。アファメーションとセルフ・アファメーションの研究は引き寄せの法則のガイドにまとめています。
誤解4 自己効力感テストの点数一つで自分がわかる。バンデューラは万能の尺度はないとし(Bandura, 2006)、一般的な尺度の開発者も、基準点はなく、特定の行動を予測するならその行動に合わせた尺度のほうがよいと案内しています(Schwarzer, 2014)。学業の場面では、課題に合わせた尺度のほうが全般的な尺度よりよく予測しました(Pajares, 1996; Kim & Park, 2001)。一つの点数より、「この課題を、いま」どれくらいやれると感じるかを別に尋ねるほうが、バンデューラのやり方に近いでしょう。
誤解5 自己効力感が低ければうつ病だ。両者はいっしょに現れることが多いものです。GSEの開発者の資料では、旧東ドイツからの移住者の一般自己効力感と抑うつの相関は、1989年に男性−.31、女性−.44、1991年に−.27と−.32でした(Schwarzer, 2014)。心血管疾患の患者では、一般自己効力感が強いほど抑うつの程度が低く(Luszczynska ほか, 2005)、日本のGSESを作成した研究では、尺度の弁別力を確かめるため、抑うつ状態にある患者と、中程度以上のセルフ・エフィカシーを示す健常者の得点を比べ、患者の得点が有意に低くなりました(坂野・東條, 1986)。子どもを追跡した研究では、勉強や人づきあいで「自分にはできない」と感じることが、その時点とその後の抑うつに、直接、また成績や向社会的行動、問題行動を通じて影響し、短い期間では実際の成績より学業の力についての信念のせいで落ち込んでいました(Bandura ほか, 1999)。それでも、自己効力感の点数でうつ病を診断することはできません。気分の落ち込みが2週間以上続いているなら、うつのセルフチェック(PHQ-9)で確かめ、うつ病の症状のガイドも見たうえで専門家に相談してください。子どもの研究と日本の尺度の論文は抄録で確認しました。
よくある質問
Q. 自己効力感と自信は同じ意味ですか? A. 似た意味で使われますが、まったく同じではありません。日常の自信は広い言葉で、自己効力感の尺度は具体的な課題ごとに「いまそれをやれるとどのくらい確信しているか」を尋ねます(Bandura, 2006)。一般自己効力感についても、シュワルツァーを含む研究チームは、生活のストレスに対処する自分の力についての楽観的で自信のある見方だと説明しています(Scholz ほか, 2002)。両者をはっきり区別した研究は見つかりませんでした。
Q. 無料の自己効力感テストは信用できますか? A. 特定の無料テストを検証した研究は見つかりませんでした。広く使われるGSEにも「何点以上なら高い」という基準点はなく、開発者は人を高い群と低い群に分けることに賛成していません(Schwarzer, 2014)。特定の課題を予測するには、その課題に合わせた尺度のほうが全般的な尺度よりよい結果でした(Pajares, 1996)。点数は目安としてだけ見てください。
Q. 自己効力感は変わりますか? A. バンデューラは、実際には比較的安全なのに怖く感じる活動を続けると、熟達の経験を通じて自己効力感がさらに高まると考えました(Bandura, 1977)。学業の研究でも、前の成績がその次の自己効力感に影響していました(Talsma ほか, 2018)。経験を積むと変わりうる信念ですが、高めようとするプログラムの効果はおおむね小さいものでした。
Q. 子どもの自己効力感はどう育てればいいですか? A. 子どもでは、成績が次の自己効力感に影響する方向だけが見られ(Talsma ほか, 2018)、学校の研究では、自分でやりとげた経験がふつう最も影響力のある源でした(Usher & Pajares, 2008)。生徒・学生の読みの自己効力感を高めようとする研究の効果は、対照群と比べてg = 0.24でした(Unrau ほか, 2018)。バンデューラの理論では、言葉で励ますより実際にやりとげる経験のほうが重みをもちますが、この助言そのものを確かめた研究はこの記事では扱っていません。
Q. 仕事ができる人は自己効力感が高いのですか? A. おおむね両者はいっしょに高くなります。114本の研究で、仕事の成果と自己効力感の相関は.38でした(Stajkovic & Luthans, 1998)。ただ、同じ人を時間を追って見ると、自己効力感は主に過去の成果の結果で(Sitzmann & Yeo, 2013)、性格、知能、経験を考えに入れると、自己効力感が上乗せして説明する分は小さくなりました(Judge ほか, 2007)。
Q. バンデューラはどんな人ですか? A. スタンフォード大学のアルバート・バンデューラは、1977年に自己効力感の理論を初めて示した論文を書き(Bandura, 1977)、2006年には自己効力感の尺度をつくるための手引きを書きました(Bandura, 2006)。自己効力感が成果を損なうとする研究に対して、2003年と2012年に反論の論文も出しています(Bandura & Locke, 2003; Bandura, 2012)。この記事では、これらの論文に書かれた内容だけを扱っています。
Q. 自己効力感が低い人にはどんな特徴がありますか? A. バンデューラの仮説に従えば、その課題を始めにくく、努力が少なく、難しくなると早くやめやすくなります(Bandura, 1977)。ただ、自己効力感は領域ごとに違うので、勉強では低くてもほかのことでは高いことがあり(Bandura, 2006)、低い自己効力感が気分の落ち込みといっしょに現れることはあっても、それ自体はうつ病ではありません。自分には何もできないという感覚が長く続き、無気力なら、無気力のガイドも見てください。
参考文献:Bandura, A. (1977), Self-efficacy: toward a unifying theory of behavioral change, Psychological Review 84(2), 191-215, https://doi.org/10.1037/0033-295X.84.2.191; Bandura, A. (2006), Guide for constructing self-efficacy scales, in F. Pajares & T. Urdan (eds.), Self-efficacy beliefs of adolescents (pp. 307-337), Information Age Publishing; Judge, T. A., Erez, A., Bono, J. E., & Thoresen, C. J. (2002), Are measures of self-esteem, neuroticism, locus of control, and generalized self-efficacy indicators of a common core construct?, Journal of Personality and Social Psychology 83(3), 693-710, https://doi.org/10.1037/0022-3514.83.3.693; Chen, G., Gully, S. M., & Eden, D. (2004), General self-efficacy and self-esteem: toward theoretical and empirical distinction between correlated self-evaluations, Journal of Organizational Behavior 25(3), 375-395, https://doi.org/10.1002/job.251; Schwarzer, R. 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