関係ガイド
恐れ・回避型愛着との付き合い方:近づきたいのに逃げたくなるとき
近づきたいのに、近づかれると逃げたくなるなら。二つの警報が同時に鳴る恐れ・回避型のために、警報の見分け方、大きな決断を一日待つルール、信頼を少しずつ積む方法をまとめました。
恐れ・回避型は気まぐれではなく、二つの警報が同時に鳴っている状態です
愛着スタイル診断で恐れ・回避型と出ると、「どうして自分はこんなに揺れ動くのか」とまず思うかもしれません。大人の愛着の研究では、愛着を二つの軸で説明します。見捨てられる心配の度合いである不安と、身近な人に頼ることがどれだけ落ち着かないかという回避です(Brennan、Clark、Shaver、1998年)。恐れ・回避型は、この二つの軸がどちらも高い位置を指す呼び名です。
BartholomewとHorowitzは1991年、「自分への見方」と「他者への見方」を組み合わせた四つのスタイルのモデルで、この位置を「恐れ型(fearful)」と呼びました。親しい関係を望みながらも、近づいて拒まれたり傷ついたりするのが怖くて避けてしまう姿です(BartholomewとHorowitz、1991年)。そのため、近づきたい気持ちと引きたい気持ちが交互に、ときには同時に大きくなります。
ひとつ知っておきたいのは、赤ちゃんの「無秩序型(混乱型)愛着」を扱う発達研究と、大人が質問紙に答えて出た恐れ・回避型は同じ概念ではないということです。大人の無秩序型愛着を質問紙で測る尺度が提案されたのは2015年のことで、研究はまだ続いています(Paetzold、Rholes、Kohn、2015年)。ですからこの結果を傷の証拠や診断として受け取るより、いまの関係で自分の気持ちがどう動くかを示す地図として使ってみてください。このガイドには、その地図を手に試せる練習をまとめました。
押したり引いたりの流れはこう回ります
恐れ・回避型の気持ちは、よくこんな順番で動きます。関係がうまくいっているときは、早く近づきたくてたくさん気持ちを注ぎます。ところが相手が本当に近づいてくると、「このままでは傷つく」という警報が鳴り、急に連絡を減らしたり冷たくしたりします。距離ができると今度は「このままでは離れていく」という警報が鳴り、またすがったり確かめたりしたくなります。
愛着の研究では、不安型のように不安が高いほど、つらさや愛着の欲求を強めて相手の反応を引き出そうとし、回避型のように回避が高いほど、その欲求を抑えて一人で抱える方向で感情を調整すると説明されています(MikulincerとShaver、2019年)。両方が高いと、どちらのやり方もなじみがある場合があり、状況に応じて一方から他方へ移ることもあります。外からは気まぐれに見えても、内側では二つの警報が順番に、あるいは同時に鳴っているのです。
この流れを知ると、自分を責めすぎずにすみます。相手にも「急に冷たくなるのは、あなたが嫌いだからではなく、怖くなっていることが多い」と説明する言葉が手に入ります。組み合わせごとにどんな流れが生まれやすいかは、愛着スタイル別の恋愛傾向で読めます。
いま鳴っている警報を見分ける
練習の第一歩は、いまどちらの警報が鳴っているかに気づくことです。気持ちが大きく揺れたとき、「見捨てられるのが怖い」に近いのか、「傷つくのが怖い」に近いのかを自分に尋ねてみてください。前者なら確かめたい、すがりたいという衝動が、後者なら隠れたい、断ち切りたいという衝動がついてきやすくなります。
見分けられたら、短く名前をつけてみましょう。「いま、離れていく警報が鳴っている」「いま、傷つく警報が扉を閉めたがっている」のようにです。実験室の研究では、否定的な感情を浮かべた顔写真を見てその感情に合う言葉を選ぶと、扁桃体の反応が弱まる様子が観察されました(Liebermanら、2007年)。名前をつけても感情は消えませんが、衝動と行動のあいだに息をつくすき間ができるかもしれません。
一日の終わりに、警報が鳴った瞬間、どちらの警報だったか、強さを0から10で短く書き留めておくと、パターンが見えてきます。返信が遅いときには離れていく警報が、相手が将来の話をしたときには傷つく警報が大きくなる、といった具合です。パターンがわかれば、次は警報が鳴る前に備えられます。
警報が鳴っているときは、大きな決断を一日先送りする
恐れ・回避型の人が後悔しやすいのは、警報がいちばん大きいときに下した決断であることが多いです。感情が高ぶったまま「もう終わりにしよう」と送ったり、連絡先を消したり、逆に深夜に長いメッセージを続けて送ったりするようなことです。だからあらかじめルールを一つ決めておきましょう。警報が7以上のときは、関係についての大きな決断を一日先送りする、というルールです。ただし、相手の脅しや支配のせいで鳴っている警報なら、このルールは当てはまりません。その場を離れる、連絡を断つ、助けを求めることは先送りしないでください(下の「一人で抱えきれないとき」を参照)。
先送りしているあいだは、まず体を落ち着かせてみてください。息を長く吐く、少し歩く、足の裏の感覚に注意を向けるといった体を使う方法のほうが、考えを変えようとする努力より先に効くことがよくあります。相手と話している途中なら、「いま気持ちがすごく揺れていて、少し休んでから話したい。別れたいという意味じゃなくて、一時間後にまた連絡するね」のように、休む理由と戻る時を一緒に伝えてください。けんかで感情が高ぶりすぎたときにいったん休み、落ち着いてから戻ることは、ゴットマンが夫婦関係の本で勧めている方法でもあります(GottmanとSilver、1999年)。
一日たって警報が静まっても同じ結論なら、そのときに決めても遅くありません。警報が静まったあとの判断のほうが、本当の気持ちに近いことが多いのです。別れと復縁を繰り返しているなら、復縁を考えるときの愛着チェックリストもあわせて読んでみてください。
信頼を少しずつ積み上げる練習
助けになることが多いのは、すぐに得られる確信より、ゆっくり積み重なる証拠です。大きな約束より、「明日のお昼に電話するね」のような小さな約束を決めて守る経験を繰り返してみましょう。自分が約束を守る経験と、相手が約束を守ってくれる経験が重なると、警報が鳴っても「前も大丈夫だった」と思い出せる根拠ができます。
守られた約束を短く書き留めておくのも役に立ちます。警報が大きいときは悪い記憶ばかりが大きく浮かびやすく、記録がバランスを取り戻してくれます。反対に、記録してみても相手がほとんど約束を守らなかったり、自分をけなし続けたりするなら、それは警報が大げさなのではなく、関係そのものを見直すサインかもしれません。
二つの軸がどちらも高いからといって、変化への道が閉ざされているわけではありません。子どものころの親との関係がつらかったと振り返りながらも、いまは安定型の人のように落ち着いて筋道立てて自分の過去を語れる人たちがいて、研究者は彼らを「獲得された安定」に分類しました(Pearson、Cohn、Cowan、Cowan、1994年)。不安が先に立つときの練習は不安型愛着との付き合い方で、引きたくなるときの練習は回避型愛着との付き合い方でさらに詳しく紹介しています。愛着が変わっていく過程についての研究は、安定型愛着に近づく方法にまとめています。
一人で抱えきれないとき
二つの警報が交互に鳴っているあいだは、一人で流れを断ち切るのが特に難しくなります。同じ相手と近づいたり離れたりを何度も繰り返す、過去の出来事が突然よみがえって今の関係を揺さぶるといった場合は、カウンセリングが助けになることがあります。カウンセリングの場は近づく練習を安全に試せる場所でもあり、二人が愛着の視点から互いの警報を理解できるよう支えるカップルカウンセリングもあります(Johnson、2008年)。過去の経験がいまの反応に深く絡んでいると感じるなら、そうした経験を数多く扱ってきたカウンセラーを探すのも一つの方法です。
気分の浮き沈みが恋愛を越えて日常全体を揺さぶり、落ち込んだ気分や不安な気分が2週間以上続くなら、愛着のパターンより気分の問題かもしれません。うつのセルフチェック(PHQ-9)や不安のセルフチェック(GAD-7)でいまの状態を確かめ、専門家に相談してみてください。これらのチェックは診断ではなく、相談を始めるための道具です。
また、警報がいまの関係にある本当の危険を知らせていることもあります。恋人に支配されたり、脅されたり、けなされたりしているなら、それは自分の愛着の問題ではなく安全の問題です。そのときは、関係にしがみつく練習より先に、信頼できる人や専門の窓口に助けを求めてください。どんな行動が危険なサインか、相談先はどこかは、回避型の恋人との話し方の「愛着の問題ではないとき」にまとめています。
心がつらすぎて自分を傷つけたい気持ちになったときは、よりそいホットライン(0120-279-338、24時間)にいつでも連絡できます。
恐れ・回避型愛着についてよくある質問
Q. 恐れ・回避型は直せる? A. 二つの警報がどちらも高いいまの位置は、一生決まった場所ではありません。警報を見分け、警報が大きいあいだは大きな決断を先送りし、小さな約束が守られる経験を重ねるうちに、少しずつ安定寄りに移っていけると考えられています。数か月後にもう一度診断を受けて、不安と回避の点数がどう変わったかを比べてみてください。
Q. 恐れ・回避型ならトラウマがあるということ? A. 必ずしもそうではありません。赤ちゃんの無秩序型愛着は、慰めを求める相手そのものが子どもを怖がらせたり、自分がおびえた様子を見せたりする関わりから生じうるという説明が提案されていますが(MainとHesse、1990年)、大人が質問紙で答えた恐れ・回避型はそれと同じ概念ではありません。反応しやすい気質や、恋愛で何度も傷ついた経験、いま抱えている大きなストレスなど、ほかの理由でも二つの軸が一緒に高くなることがあります。過去の出来事がずっと心を苦しめているなら、それだけでもカウンセリングで扱う価値があります。
Q. 恐れ・回避型と境界性パーソナリティ障害は同じ? A. 違います。愛着スタイルは関係の中で繰り返される傾向を表す言葉で、パーソナリティ障害は専門家がいくつもの基準に照らして判断する診断です。質問紙の点数だけで診断を推し量ることはできません。気分の浮き沈みや衝動のために日常がたびたび崩れるなら、テストの結果で結論を出すより、精神保健の専門家に相談してみてください。
Q. 恐れ・回避型の恋人には、どう接すればいい? A. 急に近づいては離れる様子を拒絶とだけ受け取るより、約束したとおりに一貫して行動することが助けになることが多いです。休みたいと言われたら戻る時を決めて待ち、不安そうなときは短くはっきり安心させてあげてください。ただ、相手を支えることで自分を見失うほど消耗するなら、自分の限界を伝えることも必要です。
参考文献:Brennan, Clark & Shaver (1998), Attachment Theory and Close Relationships(Simpson & Rholes 編); Bartholomew & Horowitz (1991), Journal of Personality and Social Psychology 61(2), 226-244, https://doi.org/10.1037/0022-3514.61.2.226; Paetzold, Rholes & Kohn (2015), Review of General Psychology 19(2), 146-156, https://doi.org/10.1037/gpr0000042; Mikulincer & Shaver (2019), Current Opinion in Psychology 25, 6-10, https://doi.org/10.1016/j.copsyc.2018.02.006; Lieberman et al. (2007), Psychological Science 18(5), 421-428, https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2007.01916.x; Main & Hesse (1990), Attachment in the Preschool Years(Greenberg, Cicchetti & Cummings 編); Pearson, Cohn, Cowan & Cowan (1994), Development and Psychopathology 6(2); Gottman & Silver (1999), The Seven Principles for Making Marriage Work; Johnson (2008), Hold Me Tight.
ひとりで抱えなくて大丈夫です
自分を傷つけたい気持ちになったときや、心がつらくてたまらないときは、下の窓口に相談できます。よりそいホットラインは24時間つながります。
- よりそいホットライン 0120-279-338 24時間・無料
- いのちの電話(ナビダイヤル) 0570-783-556 毎日10:00〜22:00・通話料がかかります
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