こころのガイド
集中力を高める方法:集中できない原因と、研究でわかった効果のある方法
集中できないのはなぜ? 睡眠・ストレス・気分・スマホ・ながら作業が集中力に与える影響、効果のある方法、脳トレやサプリの根拠、受診の目安を研究から整理。
集中力とは:注意はもともと揺れ動くもの
注意は一定ではなく、刻一刻と揺れ動いています(Esterman & Rothlein, 2019)。めったに現れない信号を長く見張る課題では、時間がたつほど信号に気づく割合が下がり、これを「ビジランス低下(覚醒・監視の持続の低下)」と呼びます。1948年の最初の大規模な実験室研究からみられた現象です(Klein & Feltmate, 2025)。こうして注意を長く保つ持続的注意は、たいした負担のない作業に見えますが、実際には骨の折れる精神作業でストレスにもなるという根拠が、さまざまな測定から集まっています(Warm ほか, 2008)。
考えごとがそれる「マインドワンダリング(心のさまよい)」もとてもありふれたものです。iPhoneのアプリで起きているあいだにランダムに「いましていることとは別のことを考えていますか?」と尋ねた研究では、成人2,250人の回答のうち46.9%が心がさまよっていた瞬間で、ほとんどどの活動中でも最低30%ありました。ただし、参加者はアプリをダウンロードした志願者で、73.9%が米国在住でした。研究者は時間の前後関係を調べた分析から、心のさまよいは不幸の結果であるだけでなく、おおむね原因でもあることが強く示唆されるとみましたが(Killingsworth & Gilbert, 2010)、337人でこれを改めて調べた2025年の研究では、心のさまよいと気分の関連の多くが、何について考えていたか(楽しいことか不快なことか)で説明されました(Gross ほか, 2025)。
心のさまよいが多いほど課題の成績が低い傾向があり、とくに複雑な課題でそうでした。一般の成人の標本から集めた88の相関をまとめたメタ分析の結果で、原因と結果を見分けたものではありません(Randall ほか, 2014)。集中が必要な難しい作業中は、ワーキングメモリの容量が大きい人ほど心のさまよいが少なかったという研究もあります(Kane ほか, 2007)。一方で、心のさまよいはミスと関係するコストがある反面、創造性や将来の計画とも関係しており、コストと利点の両方があるとみるレビューもあります(Smallwood & Schooler, 2015)。
よく言われる「注意の持続時間」も、一つに決まった数字ではありません。講義中の学生の注意に関する研究を検討した論文は、「10〜15分が限界」という考えは一次データで裏づけられず、学生の注意の差は授業の形式より教える人による違いのほうが大きかったとまとめています(Bradbury, 2016)。英BBCの統計番組が取材した研究者も、注意の持続時間は課題によって大きく変わると話しています(BBC, 2017)。
集中できない理由:睡眠、ストレス、気分、体の状態
集中力に最も大きく影響するものの一つが睡眠です。一晩以上(48時間未満)眠らずに過ごした研究の論文70件(認知検査147個)をまとめたメタ分析では、各研究の基準時点ともっとも長く起きていた時点を比べると、単純な注意課題で注意が途切れるミスがもっとも大きく増え(g = −0.776)、推論の正確さにははっきりした差がありませんでした(Lim & Dinges, 2010)。厚生労働省の睡眠ガイドも、睡眠不足は注意力や判断力の低下に関連し、作業効率や学業成績の低下につながりうると説明しています(厚生労働省, 2024)。
短い睡眠が続くときも同じです。健康な成人48人を、1日4時間・6時間・8時間寝床にいる条件(14日間)と眠らない条件に分けた実験では、1日6時間以下で2週間過ごした人は最大で2晩徹夜したのと同じくらいの成績の低下を示しましたが、眠気の評価はそれほど強くならず、ほとんど気づいていなかったとみられます(Van Dongen ほか, 2003)。睡眠を減らした研究61件をまとめたメタ分析でも、持続的注意が低下しました(g = −0.409; Lowe ほか, 2017)。米国睡眠医学会と睡眠研究学会は、18〜60歳の成人に規則的に7時間以上眠ることを勧めつつ、必要な睡眠の量は人によって違うとしています(Watson ほか, 2015)。
ストレスも影響します。実験室で短いストレスを与えた研究をまとめたメタ分析では、ストレスを受けた条件は比較条件より、ワーキングメモリ(研究34件、1,353人; g = −0.197)と考えを切り替える柔軟性(研究6件、280人; g = −0.300)がやや低下し、抑制の力にははっきりした差がありませんでした(Shields ほか, 2016)。これは実験室での短いストレスの結果で、日常で長く続くストレスについてはストレス解消法にまとめています。
気分が落ち込んでいるときや心配ごとが多いときも、集中しにくくなります。うつ病の人は健康な比較群より実行機能、記憶、注意が中程度低下しており(d −0.34〜−0.65)、症状がよくなったあとも実行機能と注意の差が残っていたというメタ分析があります(Rock ほか, 2014)。全般性不安障害の症状にも集中しにくさが含まれますが、たいていの人はときどき不安を感じ、それがすぐに全般性不安障害という意味ではありません(NHS, 2024b)。うつのセルフチェック(PHQ-9)にも「新聞を読む、またはテレビを見ることなどに集中することが難しい」という項目があります。気分の問題も一緒にあるなら、うつ病の症状と不安の症状を確かめてください。
ADHDも理由の一つかもしれませんが、集中できないからといってみなADHDというわけではありません。英国の国民保健サービスは、ADHDの症状はふつう12歳より前に始まると説明しており(NHS, 2025a)、成人の研究をまとめたメタ分析が2020年の世界の人口構成で補正した推定値は、子どものころの発症を求める基準で2.58%でした(Song ほか, 2021)。甲状腺機能低下(NHS, 2025c)、更年期(NHS, 2026)、新型コロナの後遺症(NHS, 2025b)のように、体の状態のせいで集中しにくくなることもあります。くわしくは大人のADHDの症状と、下の「受診を考えたいとき」を見てください。
スマホ、通知、マルチタスク:何が確かめられたか
通知は実際に集中を途切れさせることがあります。ある実験では、スマホを直接さわらなくても、通知が来るだけで注意の必要な課題の成績がはっきり乱れました(Stothart ほか, 2015)。一般の成人221人が、1週間は通知をオンにしてスマートフォンを手の届くところに置き、別の1週間は通知をオフにして遠くに置いたところ、通知をオンにした週に不注意と多動の症状を多く報告しました(Kushlev ほか, 2016)。これは自己申告の症状で、ADHDと診断したものではありません。
「スマホがそばにあるだけで頭が働きにくくなる」という主張は、2017年の二つの実験から出たものです(Ward ほか, 2017)。しかし、スマホを机の上、ポケットやかばん、別の部屋に置かせた2つ目の実験を、事前に計画を登録してそのまま繰り返した研究では、置き場所による差はありませんでした(Ruiz Pardo & Minda, 2022)。研究をまとめた分析も、影響は大きくないという方向です。スマホを使う、またはそばに置くだけで成績が下がるかを調べた研究22件をまとめた分析では、全体の効果は小さく(g = −0.14)、記憶でだけはっきりしていて注意でははっきりしませんでした(Böttger ほか, 2023)。六つのメタ分析で7,093人のデータを調べたレビューは、ワーキングメモリでだけ理論より小さい効果を見つけ(Parry, 2024)、研究33件(4,368人)をまとめた分析は有意な効果はないとしています(d = −0.02; Hartanto ほか, 2024)。
いくつもの作業を行き来すると、切り替えのコストが生じます。課題を切り替えた直後は反応がかなり遅くなり、たいていミスも増え、事前に準備する時間があればこのコストは減りますが、なくなりはしません(Monsell, 2003)。複数のメディアを同時によく使う人ほど無関係な刺激に気をとられやすいという2009年の研究(Ophir ほか, 2009)は、その後の実験室での再現では多くが確かめられませんでした。2つの再現研究では14の検査のうち有意だったのは5つだけで、39の効果をまとめたメタ分析でも関連は弱く、小規模研究の偏りを補正すると有意でなくなりました(Wiradhany & Nieuwenstein, 2017)。118の評価をまとめたメタ分析も、全体の関連は小さく、元の研究に近い方法では結果が保たれなかった一方、日常の実行機能を自己申告させた研究では負の関連が一貫して出ているとまとめています(Parry & le Roux, 2021)。どちらが原因なのかはまだわかっていません(Uncapher & Wagner, 2018)。
「人々の注意の持続時間がどんどん短くなっている」という話も根拠が弱いものです。Twitterで一つのハッシュタグが上位50位以内にとどまった時間は、2013年の平均17.5時間から2016年には11.9時間に縮みましたが、これは社会全体の関心が次の話題へ移る速さであって、一人が集中できる時間ではありません(Lorenz-Spreen ほか, 2019)。あるレビューは、押し寄せるオンライン情報が注意を分散させ、持続的な集中を妨げる可能性があるとみていますが、まだ「ありうる」という段階です(Firth ほか, 2019)。スマホの使い方を減らす方法はスマホ依存(過依存)にまとめています。
集中に役立つこと:根拠と、比べた相手をあわせて
まず大切にしたいのは睡眠です。上で見たように、睡眠が足りないと単純な注意がいちばん大きく揺らぎます(Lim & Dinges, 2010)。次は、じゃまを減らすことです。237人の無作為化フィールド実験では、通知を1日3回まとめて受け取った群は、いつも通り受け取った群より集中でき、生産的で、気分がよく、スマートフォンをよりコントロールできていると感じ、ストレスも低くなりましたが、通知をまったく受け取らなかった群はそうした利点がほとんどなく、不安とFoMOが高くなりました(Fitz ほか, 2019)。先延ばしにしていた作業を始めるときは、「〇〇したら△△する」のように、いつ・どこで・何をするかを決めておく実行意図が役立つかもしれません。94本の研究をまとめたメタ分析では、こうした計画を立てた人は、目標を決めただけの人より目標の達成度が中〜大程度高くなりました(d = 0.65; Gollwitzer & Sheeran, 2006; Rozental ほか, 2018)。
短い休憩も役立つことがあります。10分未満の短い休憩を試した22の標本(2,335人)をまとめたメタ分析では、休憩しなかった比較群より活力が上がり(d = .36; 9研究、913人)、疲労が減りましたが(d = .35; 9研究、803人)、全体の成績の向上は統計的に有意ではありませんでした(d = .16; 15研究、1,132人)。成績の向上は負担の少ない課題でだけはっきりしており、休憩が長いほど成績がより上がりました(Albulescu ほか, 2022)。25分集中して5分休むポモドーロ・テクニックは、小さな実験が数本あるだけで、結果もまちまちです。決まった間隔で休んだ学生のほうが自分で休んだ学生より疲れや気の散りが少なかったという実験(Biwer ほか, 2023)、ポモドーロのほうが疲労が早く増えたという実験(Smits ほか, 2025)、決まった短い休憩(12分読んで3分休む)より自分で休んだほうが気分と集中がよかったという実験(Göksu ほか, 2026)があり、こなした量や学んだ量はどの実験でも差がありませんでした。ただし3つ目の実験の研究者は、学習の測り方が差を捉えるほど敏感でなかったかもしれないとしています。
運動の効果は、期待されるより小さいものです。1回運動したあと認知の成績が少しよくなるという研究は多いものの効果は小さく(79研究、g = 0.097; Chang ほか, 2012)、米国の身体活動ガイドラインのための検討は、中強度以上の運動の直後にしばらく現れる利点を強い根拠があるとしています(Erickson ほか, 2019)。健康な人が運動を続けたときの効果は、ランダム化比較試験80件で小さく(Ludyga ほか, 2020)、複数のメタ分析に含まれたランダム化試験を改めて分析した研究では、対照群と比べた効果がd = 0.22から、活動的な対照群と開始時の差を考慮すると0.13、出版バイアスを補正すると0.05とほぼ消えました(Ciria ほか, 2023)。そのため、「運動すれば集中力が大きく上がる」と期待する根拠は弱いといえます。
自然の中で過ごすことは、結果がまちまちです。自然環境とそうでない環境を比べた31の研究をまとめたレビューでは、注意に関する検査の13の分析のうち、自然のほうがはっきりよかったのは3つだけで(Ohly ほか, 2016)、適切な対照条件と比べた42の論文を検討したレビューは、ワーキングメモリと考えの柔軟性が小〜中程度よくなった一方、注意のコントロールはそれほど確かではないとみています(Stevenson ほか, 2018)。マインドフルネスのプログラムを試したランダム化研究56件(2,931人)を検討し、そのうち45件(2,238人)をまとめたメタ分析では、実行機能とワーキングメモリに小さな効果がありましたが、何もしなかった群よりよかっただけで、別の活動をした群よりよいわけではなく、注意の検査では効果が確認されませんでした(Whitfield ほか, 2022)。瞑想を試してみたいなら、瞑想ガイドを見てください。
あるレビューは、カフェインは覚醒と単純な注意を高めるものの、記憶や、判断・意思決定のような高次の実行機能への効果はそれほど一貫していないとまとめています(McLellan ほか, 2016)。毎日飲む人では、覚醒効果の一部が夜のあいだに生じた離脱症状を元に戻しているだけかもしれないという研究もあります。379人が参加したこの研究では、ふだんほとんど飲まない人はカフェインをとっても覚醒が上がりませんでした(Rogers ほか, 2010)。韓国食品医薬品安全処は、1日の最大摂取の目安を成人400mg、妊婦300mg、子ども・青少年は体重1kgあたり2.5mg以下と案内し、目安の範囲内でも動悸、頭痛、不安感、睡眠障害があれば減らすかやめ、午後遅くや夜は控えるようにとしています(韓国食品医薬品安全処, 2026a)。欧州食品安全機関も、健康な成人が1日400mgまでを分けてとることには安全上の懸念はないとしていますが、妊娠中は200mgまでとしています(EFSA, 2015)。カフェインと睡眠の関係は不眠症にあります。
勉強中の音楽は、課題によって違います。文章を読む研究65件をまとめたメタ分析では、騒音、話し声、音楽のどれも、静かなときより読解を少し下げ(g = −0.21)、歌詞のある音楽は歌詞のない音楽よりじゃまになった可能性が高いという結果でした(Vasilev ほか, 2018)。音楽なしと比べた別のメタ分析では、BGMは読むことと記憶には少し不利でしたが、気分はよくし、スポーツの成績は上げました(Kämpfe ほか, 2011)。ホワイトノイズやピンクノイズは、ADHDがあるかADHDの症状がある子どもや大学生くらいの若者の研究(13件、335人)では、ノイズがないか小さいときより課題の成績が少しよくなりましたが(g = 0.249)、ADHDのない比較群(11件、335人)ではかえって少し悪くなりました(g = −0.212; Nigg ほか, 2024)。一日のうち集中しやすい時間が人によって違うかもしれないことは、朝型・夜型ガイドにあります。
根拠が弱いもの:脳トレ、集中力サプリ、「勉強ができる薬」
脳トレや集中力ゲームをすると、そのゲームやごく似た課題はうまくなりますが、日常の集中や勉強につながるという根拠は少ないものです。脳トレの研究を評価したレビューは、訓練した課題がよくなる根拠は多い一方、かけ離れた課題や日常の認知がよくなる根拠は少ないとし(Simons ほか, 2016)、ワーキングメモリの訓練も、直後にはワーキングメモリの検査の成績が確かに上がりましたが、言語・非言語の能力、読解、算数のようなかけ離れた課題では、別の活動をした対照条件と比べて信頼できる向上はありませんでした(Melby-Lervåg ほか, 2016)。メタ分析を改めてまとめた分析でも、プラセボ効果と出版バイアスを統制すると、かけ離れた課題への効果(遠い転移)はゼロでした(Sala ほか, 2019; Gobet & Sala, 2023)。
「集中力サプリ」も根拠が弱いものです。健康な人を対象にしたイチョウ葉エキスのランダム化試験では、プラセボと比べた注意への効果はありませんでした(8試験、910人、d = −0.08; Laws ほか, 2012)。オメガ3サプリを試した24の研究でも認知の成績はよくならず、もともとオメガ3の値が低かった人の短期記憶だけがよくなりました(Cooper ほか, 2015)。ADHDのある子ども・青少年でも、オメガ3などの多価不飽和脂肪酸は親が評価したADHD症状全体に効果がないという確実性の高い根拠がありました(Gillies ほか, 2023)。米国国立補完統合衛生センターは、イチョウ葉がワルファリンなどの抗凝固薬を飲んでいる人の出血のリスクを高めるおそれがあるとしています(米国国立補完統合衛生センター, 2025)。韓国食品医薬品安全処は、2025年の大学入試前の点検で、「受験生サプリ」「記憶力」「集中力」などの表現で不当に広告した食品・健康機能食品のオンライン投稿45件を摘発しました(韓国食品医薬品安全処, 2025)。
「勉強ができる薬」もありません。健康な人に、処方される中枢神経刺激薬を与えた研究48件(1,409人)をまとめたメタ分析は、認知への効果はおおむね大きくないだろうとし、健康な使用者は認知より活力や意欲のために使っているのかもしれないとしています(Ilieva ほか, 2015)。睡眠不足でない健康な成人でプラセボと比べたメタ分析も、効果は小さく、実際に使われる状況をよく反映していないとまとめています(Roberts ほか, 2020)。韓国食品医薬品安全処は、病気がないのにADHD治療薬(メチルフェニデート)を飲むと頭痛、不安、ひどい場合は幻覚などの副作用が出ることがあり(韓国食品医薬品安全処, 2026c)、処方なしにオンラインで買ったり、家族や知人が代わりに処方を受けたり買ったりした薬を受け取って飲んだりすることはすべて韓国の麻薬類管理に関する法律の違反だとしています(韓国食品医薬品安全処, 2026b)。ただし、ADHDのある人に処方された薬は効果が確かめられた治療なので、この話とは区別する必要があります(大人のADHDの症状)。薬物の乱用が心配なら、薬物依存のガイドを見てください。
受診を考えたいとき
急に混乱したり、注意を向けられなくなったり、覚えていられなくなったりしたら、すぐに救急の受診が必要です(NHS, 2024a)。韓国でも日本でも119に連絡してください。
ときどき集中できないのはよくあることです。英国の国民保健サービスは、記憶の問題が続いたり日常生活に影響したりするなら受診し、原因を自分で診断しようとしないよう勧めています(NHS, 2023a)。うつの症状が2週間を超えて毎日、一日の大半続くなら受診するようにとも案内しています(NHS, 2023b)。うつのセルフチェック(PHQ-9)や不安のセルフチェック(GAD-7)でこの2週間をふり返ることはできますが、診断ではありません。
子どものころからいろいろな場面で集中の問題が続き、勉強や仕事、人間関係に影響しているなら、受診して評価を受けることができます。受診では、自閉スペクトラム症、トゥレット症、不安など、似た症状を起こしうるほかの状態もあわせて検討することがあります(NHS, 2025a)。甲状腺機能低下症の症状には、集中したりはっきり考えたりすることの難しさがあり、よくある症状でほかの原因のこともありますが、受診して確かめることが大切だとされています(NHS, 2025c)。更年期には記憶や集中の問題を感じることがあり、睡眠不足やひどい疲れがあると悪化することがあり(NHS, 2026)、新型コロナの後遺症で記憶や集中の問題、いわゆるブレインフォグが残ることもあります(NHS, 2025b)。
「ブレインフォグ」は診断名ではなく、さまざまな困りごとをまとめて呼ぶ日常的な言葉です。オンラインの投稿を分析した研究では、人々がこの言葉で表した一人称の描写141件に、物忘れ(51件)、集中しにくさ(43件)、解離の体験(34件)などが混ざっており(McWhirter ほか, 2023)、神経内科のレビューも、患者がこの言葉でとても幅広い症状を表しているとまとめています(McWhirter, 2025)。初めて受診するなら初めての精神科を、記憶の問題のほうが心配なら物忘れのガイドを見てください。
よくある5つの誤解
誤解1 現代人の集中力は8秒で、金魚より短い。BBCがたどったところ、この数字は2015年のマイクロソフト・カナダの消費者向け報告書を通じて広まりましたが、報告書もほかのウェブサイトを出典にしていただけで、そのサイトが出典に挙げた機関も裏づける研究の記録を見つけられませんでした。金魚の注意や記憶がとくに短いという根拠もありませんでした(BBC, 2017)。講義中の注意についても、10〜15分といった決まった限界はデータで裏づけられていません(Bradbury, 2016)。
誤解2 マルチタスクが得意なら効率が上がる。作業を切り替えるたびに、反応が遅くなりミスが増える切り替えコストが生じます(Monsell, 2003)。運転シミュレーターで200人に運転と難しい記憶課題を同時にしてもらった研究では、成績がまったく落ちなかった人は2.5%だけでした(Watson & Strayer, 2010)。
誤解3 スマホはそばに置くだけで頭を悪くする。この主張の2つ目の実験は、そのまま繰り返したときに再現されず(Ruiz Pardo & Minda, 2022)、研究をまとめた分析も、効果はないか小さいという方向です(Böttger ほか, 2023; Parry, 2024; Hartanto ほか, 2024)。通知のように実際に注意を引くものは、別の話です(Stothart ほか, 2015)。
誤解4 モーツァルトやホワイトノイズを聞けば、だれでも集中力が上がる。「モーツァルト効果」は、モーツァルトを聞いたあと空間課題の得点が上がったという実験から始まりましたが、のちに検出力の低い研究と測定上の偏りによる結果だとまとめられました(Oberleiter & Pietschnig, 2023)。ホワイトノイズやピンクノイズは、ADHDのない比較群ではかえって成績を少し下げました(Nigg ほか, 2024)。
誤解5 集中できないならADHDだ。睡眠、ストレス、気分、体の状態など、集中できない理由はたくさんあります。ADHDの症状はふつう12歳より前に始まり、受診では似た症状を起こしうるほかの状態もあわせて検討することがあります(NHS, 2025a)。集中できないことだけで自己診断せず、気になるなら大人のADHDの症状を読んでみてください。
よくある質問
Q. 集中力のテストはありますか? A. mind.ioには、集中力やADHDを判定する検査はありません。うつのセルフチェック(PHQ-9)には集中しにくさを尋ねる項目がありますが、気分をふり返るための道具で、診断ではありません。
Q. ぼーっとするのは役に立ちますか? A. 何かを学んだあと数分間静かに休んだ人のほうが、別の課題をした人よりあとでよく覚えていたという研究があります。37の研究をまとめたメタ分析でこうした効果があり(g = 0.448)、7日後にも残っていました(g = 0.270; Weng ほか, 2025)。ただし、事前に計画を登録して繰り返した実験では、その実験だけでは有意ではなく、この利点には考えごとにもとらわれない休息の状態が必要かもしれないとされています(Humiston ほか, 2019)。これは集中力ではなく記憶についての研究で、休んでいるあいだにスマホを見るのとは違います。
Q. コーヒーを飲むと集中できますか? 1日にどれくらいまで大丈夫ですか? A. 覚醒と単純な注意はよくなることがありますが(McLellan ほか, 2016)、上で見た韓国食品医薬品安全処の目安の範囲内で飲み、午後遅くや夜は控えるのがよいでしょう(韓国食品医薬品安全処, 2026a)。厚生労働省は、個人差が大きいことなどから、一生とり続けても健康に悪影響がないと推定される1日あたりの摂取許容量(ADI)は、日本でも国際的にも設定されていないと説明しています(厚生労働省, n.d.)。
Q. 何分ごとに休めばいいですか? A. 決まった数字はありません。1958年のあるビジランス実験では、40〜50分のあいだに反応がだんだん遅くなり、40分後に休ませると反応がまた速くなって、長く休むほどその効果が大きかったといいます(Klein & Feltmate, 2025)。短い休憩をまとめたメタ分析でも、休憩が長いほど成績がより上がりましたが(Albulescu ほか, 2022)、これをそのまま日常の勉強に当てはめられるルールではありません。
参考文献:Esterman, M., & Rothlein, D. (2019), Models of sustained attention, Current Opinion in Psychology, 29, 174-180, https://doi.org/10.1016/j.copsyc.2019.03.005; Klein, R. M., & Feltmate, B. B. T. (2025), The vigilance decrement: Its first 75 years, Frontiers in Cognition, 4, 1632885, https://doi.org/10.3389/fcogn.2025.1632885; Warm, J. S., Parasuraman, R., & Matthews, G. (2008), Vigilance requires hard mental work and is stressful, Human Factors, 50(3), 433-441, https://doi.org/10.1518/001872008X312152; Killingsworth, M. A., & Gilbert, D. T. (2010), A wandering mind is an unhappy mind, Science, 330(6006), 932, https://doi.org/10.1126/science.1192439; Gross, M., Raynes, S., Schooler, J. W., Guo, E., & Dobkins, K. (2025), When is a wandering mind unhappy? The role of thought valence, Emotion, 25(3), 671-682, https://doi.org/10.1037/emo0001434; Randall, J. G., Oswald, F. L., & Beier, M. E. 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